【11月26日 AFP】ロシアのドミトリー・メドベージェフ(Dmitry Medvedev)大統領は、アジア太平洋経済協力会議(Asia-Pacific Economic CooperationAPEC)首脳会議後に中南米諸国を訪問し、米国のお膝元でロシアの存在感を積極的に主張するつもりだ。それに対し、専門家などからはメドベージェフ大統領にとって耳の痛い指摘がなされている――「話題の中心は中国だ」と。

 メドベージェフ大統領は、APEC首脳会議開催地のペルー・リマ(Lima)で各国首脳と会談を行い、絶えず上機嫌な様子だった。同行した露メディアの記者団に対しても「同行を望む人がいれば、一緒に旅行を続けましょう」とその後の日程への同行を熱心に勧めた。

 メドベージェフ大統領はAPEC終了後、ブラジル、そして反米を掲げるベネズエラとキューバを訪問する予定だ。ベネズエラでは、同国沖で行われるロシアとベネズエラの合同軍事演習を視察することになっているが、これは米国に対する挑戦的なメッセージだと受け止められている。

 かつての冷戦時代を思い起こさせるように、メドベージェフ大統領は、ソ連時代に緊密な関係を保っていた中南米諸国とロシアとの新たな関係構築を希望している姿勢を強調する。

 だが、露コメルサント(Kommersant)紙は、中国の胡錦濤(Hu Jintao)国家主席はリマ市内をオープンカーでさっそうとパレードし、APEC首脳会議でも敬意を払われたことと比較し、メドベージェフ大統領のリマ訪問は「エコノミークラス級」だと指摘する。

 同紙はさらに、胡主席が数日前にキューバを訪問し経済援助を惜しげもなく供与したことを挙げ、メドベージェフ大統領に同行してキューバを訪問するロシアの企業関係者たちは、中国企業が見向きもしない契約しか取ることはできないと悲観的な見方を示す。

 ロシアと中国は、表面上は上海協力機構(Shanghai Cooperation OrganisationSCO)に属する同盟国だといえる。だが、モスクワ(Moscow)在住の「世界の出来事の中のロシア(Russian in Global Affairs)」誌編集長のフョードル・ルキャノフ(Fyodor Lukyanov)氏はどちらが覇権を握っているかは一目瞭然(りょうぜん)だと指摘する。

 ルキャノフ氏は「ロシアと中国は、世界各地、特に中南米において影響力を競っているが、中国の方がはるかに堅固な地位を確保している。国際的な影響力からいうと、別の土俵で戦っているようなものだ」と強調する。(c)AFP/Nick Coleman