【11月7日 AFP】次期米大統領に選出された民主党バラク・オバマ(Barack Obama)上院議員の次期政権の最初の閣僚人事として首席補佐官への就任要請を受諾した同党のラーム・エマニュエル(Rahm Emanuel)下院議員(48)は、政界での戦いで、ボクサーのような威圧的態度で鋭いジャブを繰り出してきた。

 オバマ氏と同じイリノイ(Illinois)州選出のエマニュエル議員は、イスラエルからの移民の息子で、激しい闘魂と党派主義の持ち主。時折口汚い発言をすることでも知られているが、シカゴ(Chicago)の政界で経験を積んできた。

 米政界から党派主義を根絶させることを公約に出馬したオバマ氏は、エマニュエル氏がワシントンでの権力構造と裏の政治手法に通じていることを買い、恐らく「悪い警官」を演じさせるために指名したのだろう。

■将来的には下院議長も

 エマニュエル氏は現在、民主党下院指導部でナンバー4の位置にいる。ビル・クリントン(Bill Clinton)元大統領の下でホワイトハウス(White House)高官を務めたことで全国的に知られるようになり、クリントン政権の政策を広く知らしめた。

 次期オバマ政権では、健康保険制度、エネルギー、税制改革、気候変動対策といった意欲的な国内政策について、議会での法案通過を加速させるために主要な役割を果たすとみられている。

 同氏は政策と選挙戦略に精通しており、2006年の中間選挙で民主党が下院で議席の過半数を獲得した際の立役者として評価されている。その能力、若さ、将来性から、将来の下院議長との呼び声も高い。

■「ラームボー」エマニュエル

 エマニュエル氏は近づきやすく、また強烈なコメントを多くすることから議会担当記者からは好まれているが、彼の鋭い舌鋒(ぜっぽう)と好戦的スタイルの犠牲となってきた共和党議員は、議会から冷たく同氏を見送った。

 共和党全国委員会(Republican National CommitteeRNC)のアレックス・コナント(Alex Conant)報道官は、「ホワイトハウスに必要なのは首席補佐官で、エマニュエル氏のような選挙戦の司令官ではない」とし、エマニュエル氏の名前と映画『ランボー(Rambo)』の主人公をかけて「『ラームボー』が民主党が多数を占める議会を運営したやり方でオバマ氏がホワイトハウスを運営すれば、わが国は立ちゆかなくなるだろう」と語った。

■ソフトな面も

 一方、エマニュエル氏はソフトな面も見せている。首席補佐官に伴う長時間労働と強烈なプレッシャーが幼い子ども3人に影響を与えることを憂慮し、就任については悩んだという。

 同氏は6日放映されたMSNBCとのインタビューで「わたしが以前ホワイトハウスで働いていたときは、子どもはいなかった。わたしはホワイトハウスがどういうところかよく理解しており、そしてわたしには現在、子どもがいる。家庭がある」とした上で、「わたしの仕事量と、妻とわたしが家庭のためにやるべきことについては、個人の選択だ」と語った。(c)AFP