<08米大統領選挙>次期大統領に求められるのは対日・中の「バランス外交」
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【10月29日 AFP】米大統領選まで残すところ約1週間。選ばれる次期大統領は、台頭する中国との関係強化と、長年の同盟国である日本との関係維持というバランス外交を強いられることになる。
世論調査で米国民は日本よりも中国が重要だと認識していることが示され、また日本政府は米政府が日本に対する関心を失いつつあるのではないかと懸念する中、大統領候補の民主党バラク・オバマ(Barack Obama)上院議員と共和党ジョン・マケイン(John McCain)上院議員のいずれかが、この問題に直面することになる。
■対中関係、オバマ氏は支持 マケイン氏は慎重
オバマ氏は、半世紀におよぶ日米同盟を支持する一方、中国政府との関係強化にも賛成している。
米国が、低価格品の供給元としてだけではなく、赤字を埋める資金源として中国への依存を強める中、オバマ氏は主要先進国(G8)へ中国も加えようと働きかけている。また、北朝鮮の核開発に関する6か国協議において中国の指導力を活用する、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)現大統領の政策も支持している。
一方、ベトナム戦争の英雄として知られるマケイン氏は、軍事大国として成長し、アジアにおける米国のプレゼンスを脅かす中国との関係について慎重な姿勢を示している。
同氏は、まず二国間同盟ありきとするこれまでの政策を主張しており、米政府は長年におよぶ民主同盟国である日本、韓国、台湾との関係強化を優先すべきとしている。
■対中、対日関係の狭間で難しい舵取り
米国民が、米国との関与・協調・競争の面からも多角的といえる中国との外交関係を理解し始めるなか、次期大統領は日本との関係のバランスを取るために難しい選択に迫られる場面も出てくると専門家は指摘する。
第1次ブッシュ政権で国家安全保障会議(NSC)上級アジア部長で、現在はマケイン陣営の顧問を務めるマイケル・グリーン(Michael Green)米戦略国際問題研究所(CSIS)日本部長は、例えば、戦力強化中の中国空軍を上回る能力を持つF22戦闘機の売却を日本政府が求めた場合、次期大統領は合意するのか、また、新政権は北朝鮮の核開発放棄のプロセスが難航するリスクがあるとしても、北朝鮮との関係より、日本や韓国との密接に協調していくかといった問題に直面することになると指摘する。
■日本は米国の北朝鮮政策に不満
ブッシュ政権は最近、北朝鮮が日本人拉致被害者の消息について完全な調査をすることを拒否したにもかかわらず、同国を米国のテロ支援国家指定から解除したことから、日本政府には不満が募っている。
日本の政治家はこの措置を米国の裏切りと見なしており、野党・民主党の小沢一郎(Ichiro Ozawa)代表は、日米関係は本来の同盟関係にないと述べている。
■米国民は対中関係を重視、世論調査
このように日米関係がぎくしゃくする中、米シンクタンク「シカゴ地球問題評議会(Chicago Council on Global Affairs)」が28日に発表した世論調査では、米国民の52%が中国を「非常に重要」と回答し、日本を重要とみなす45%を上回った。
また、「重要な国益」に関して中国と日本どちらがより重要かとの質問に対しては、回答者の51%が中国、44%が日本と回答した。ただし、「米国にとっての重要性」については、日本が依然としてイスラエル(40%)、ドイツ(29%)、サウジアラビア(44%)といったほかの同盟国の中では1位だった。
■日・米・中3か国関係の枠組み構築を
一方、日米関係と日中関係を比較するのは賢明ではないとする見方もある。
現在、米シンクタンク「ブルッキングス研究所(Brookings Institution)」の客員研究員を務める日本人ジャーナリストの飯塚恵子(Keiko Iizuka)氏は、「米中関係は通商、貿易、経済協力の上に成り立っているため、予測可能な将来に中国が米国の同盟国になることはない。これに対し、日米関係は安全保障、経済、文化、社会的関係を含めた包括的なもの」と指摘する。
飯塚氏は、次期米大統領は、日・米・中の3か国関係の枠組みを構築する必要があるとし、米国の次期政権にとって、3か国関係を考慮した外交政策の策定が基本方針の1つとなるとの見方を示した。(c)AFP
世論調査で米国民は日本よりも中国が重要だと認識していることが示され、また日本政府は米政府が日本に対する関心を失いつつあるのではないかと懸念する中、大統領候補の民主党バラク・オバマ(Barack Obama)上院議員と共和党ジョン・マケイン(John McCain)上院議員のいずれかが、この問題に直面することになる。
■対中関係、オバマ氏は支持 マケイン氏は慎重
オバマ氏は、半世紀におよぶ日米同盟を支持する一方、中国政府との関係強化にも賛成している。
米国が、低価格品の供給元としてだけではなく、赤字を埋める資金源として中国への依存を強める中、オバマ氏は主要先進国(G8)へ中国も加えようと働きかけている。また、北朝鮮の核開発に関する6か国協議において中国の指導力を活用する、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)現大統領の政策も支持している。
一方、ベトナム戦争の英雄として知られるマケイン氏は、軍事大国として成長し、アジアにおける米国のプレゼンスを脅かす中国との関係について慎重な姿勢を示している。
同氏は、まず二国間同盟ありきとするこれまでの政策を主張しており、米政府は長年におよぶ民主同盟国である日本、韓国、台湾との関係強化を優先すべきとしている。
■対中、対日関係の狭間で難しい舵取り
米国民が、米国との関与・協調・競争の面からも多角的といえる中国との外交関係を理解し始めるなか、次期大統領は日本との関係のバランスを取るために難しい選択に迫られる場面も出てくると専門家は指摘する。
第1次ブッシュ政権で国家安全保障会議(NSC)上級アジア部長で、現在はマケイン陣営の顧問を務めるマイケル・グリーン(Michael Green)米戦略国際問題研究所(CSIS)日本部長は、例えば、戦力強化中の中国空軍を上回る能力を持つF22戦闘機の売却を日本政府が求めた場合、次期大統領は合意するのか、また、新政権は北朝鮮の核開発放棄のプロセスが難航するリスクがあるとしても、北朝鮮との関係より、日本や韓国との密接に協調していくかといった問題に直面することになると指摘する。
■日本は米国の北朝鮮政策に不満
ブッシュ政権は最近、北朝鮮が日本人拉致被害者の消息について完全な調査をすることを拒否したにもかかわらず、同国を米国のテロ支援国家指定から解除したことから、日本政府には不満が募っている。
日本の政治家はこの措置を米国の裏切りと見なしており、野党・民主党の小沢一郎(Ichiro Ozawa)代表は、日米関係は本来の同盟関係にないと述べている。
■米国民は対中関係を重視、世論調査
このように日米関係がぎくしゃくする中、米シンクタンク「シカゴ地球問題評議会(Chicago Council on Global Affairs)」が28日に発表した世論調査では、米国民の52%が中国を「非常に重要」と回答し、日本を重要とみなす45%を上回った。
また、「重要な国益」に関して中国と日本どちらがより重要かとの質問に対しては、回答者の51%が中国、44%が日本と回答した。ただし、「米国にとっての重要性」については、日本が依然としてイスラエル(40%)、ドイツ(29%)、サウジアラビア(44%)といったほかの同盟国の中では1位だった。
■日・米・中3か国関係の枠組み構築を
一方、日米関係と日中関係を比較するのは賢明ではないとする見方もある。
現在、米シンクタンク「ブルッキングス研究所(Brookings Institution)」の客員研究員を務める日本人ジャーナリストの飯塚恵子(Keiko Iizuka)氏は、「米中関係は通商、貿易、経済協力の上に成り立っているため、予測可能な将来に中国が米国の同盟国になることはない。これに対し、日米関係は安全保障、経済、文化、社会的関係を含めた包括的なもの」と指摘する。
飯塚氏は、次期米大統領は、日・米・中の3か国関係の枠組みを構築する必要があるとし、米国の次期政権にとって、3か国関係を考慮した外交政策の策定が基本方針の1つとなるとの見方を示した。(c)AFP