【10月21日 AFP】21日から日本訪問を開始したインドのマンモハン・シン(Manmohan Singh)首相は、前日ニューデリー(New Delhi)で行った日本記者団との会見で、貿易自由化を目指す両国の経済連携協定(EPA)の年内合意に意欲を示した。

 EPAについては、今年半ばまでの合意が目指されていたが実現せず、今回のシン首相の3日間の訪日までに実質的な進展も見られなかった。しかし、会見でシン首相は、急成長を遂げているインドとアジア最大の経済大国日本はともに、自由貿易協定から得るものがあるだろうと前向きに語った。

 シン首相は21日夜に羽田空港に到着。22日には、長年インドとの関係強化を提唱している麻生太郎(Taro Aso)首相との首脳会談を予定している。会談で両者は、インドがニューデリー-ムンバイ(Mumbai)間で計画している全長1468キロの鉄道建設費に対する円借款協定に調印する見込みだ。

 またシン首相は、インドの原子力エネルギー市場に対する日本からの投資にも期待を寄せた。日本政府の中には、核拡散防止条約をインドが批准していないことに対する懸念があるが、シン首相は環境に負荷のないエネルギーとしての原子力に期待し、将来的には日本とも原子力技術を共有したいと述べた。しかし外務省筋は、インドとの原子力協力協定を追求する可能性はないと否定している。

 原子力技術におけるインドの孤立を数十年ぶりに解消し、技術移転や燃料調達を可能とした米国とインドの原子力協力協定についても、世界で唯一の被爆国である日本の支持は消極的だった。(c)AFP/Hiroshi Hiyama