【10月17日 AFP】カンボジアのフン・セン(Hun Sen)首相は17日の閣議後、記者団に対し同国の最優先課題として防衛力の向上に取り組むと語った。一方で、世界遺産「プレアビヒア(Preah Vihear)寺院」遺跡周辺の領有権をめぐってタイとカンボジア両国軍が対峙している問題については、最善の解決策は対話だと述べ、タイと戦争になるような事態はありえないと強調した。

 プレアビヒア遺跡は今年7月、カンボジアの国連世界遺産に登録されたが、周辺地域が国境線未画定のまま残されているため、遺産登録をきっかけに、同地域の領有をめぐり対立し、両国軍が対峙する事態にまで発展している。

 カンボジアは今年初め、国連安全保障理事会(UN Security Council)に領有権問題の調停を求めているが、これについてフン・セン首相は「タイ・カンボジア両国は、現在の枠組み内で対話を再開することで合意している」と述べ、第三者による調停の可能性を否定した。

 バンコクに駐在する西側諸国の軍関係者によれば、陸・海・空軍合わせて30万人を超える兵力を保有するタイに対し、カンボジアの兵力は、兵士の人数と錬度、兵器の性能などにおいてタイ国軍にはるかに劣っているという。国境地帯の兵士によれば、寺院周辺で15日に起きた銃撃戦の際、カンボジア兵が使用した冷戦時代の銃は弾丸が発射されなかったものも多かったという。

 両国は銃撃戦の再発を防ぐため、周辺地域で合同パトロールを実施することで合意したが、パトロール開始の時期は決まっていない。カンボジア軍のケ・キム・ヤン(Keo Kim Yean)司令官も、「国境が画定していない状況で、どこで合同パトロールを行うのか。当面は両軍を引き離しておくしかない」と述べ、パトロールの実効性に疑問を呈した。(c)AFP/Suy Se