【10月16日 AFP】米国政界の「希少種」である共産党は、昨今の資本主義経済の混乱の中、「攻め」の姿勢に転じようとしている。

「マルクス・レーニン主義の時代がとうとう到来した」と、ニューヨーク(New York)マンハッタン23番街の共産党本部で取材に応じたリベロ・デラ・ピアナ(Libero Della Piana)地区議長(36)は、「われわれは非常に興奮している。転換点にいると感じるよ」と語る。

 イタリア人とアフリカ系アメリカ人を親に持つデラ・ピアナ地区議長は、次のように続ける。「ロナルド・レーガン(Ronald Reagan)政権以来初めて、守り一辺倒にならずともよいという気持ちの余裕を感じている。わが党は改めて宣言したい。少数の強欲の上に成り立つ国ではなく、新しい基礎の上での国家の再建、より良い世界の再建を目指そうではないかと」。

 米国共産党は1919年に創設された。冷戦時代、そして1950年代の反共闘争時には、共産党員は排斥され、職場を解雇されるなどの差別も受けた。現在の党員数は3000-3500人。11月の大統領選で共和・民主両党を脅かす存在ではないようだが、同党は、最近の金融危機が強い追い風になっていると感じている。

「電話での問い合わせが増えている。わが党に興味を持つ人が増えている。わが党にも出番が回ってきた」とデラ・ピアナ地区議長。このたびの金融危機の教訓その1を、高らかに読み上げた。「市場は自らを統制することができない。統制がとれなくなると、制御が利かなくなる」。

 共産党青年部の調整役をつとめるエリカ・スマイリー(Erica Smiley)さん(28)は、「若者たちは、平和、雇用、保健医療、教育への関心が高いが、わが党はこれらすべてに答えを用意することができる」と自信たっぷりだ。

 ただ、マルクス・レーニン主義の蔵書が並ぶ共産党本部も、資本主義の牙城とも言うべき「一等地」に建っている。AFPが取材に訪れた日は、人影がほとんどなく、革命的というよりは気だるい雰囲気が漂っていた。「投票の呼び掛けのために、出払っているんです」と、37年間党員だという男性(65)は言う。

 大統領候補を出していない同党は、民主党のバラク・オバマ(Barack Obama)候補を支持しているわけではないが、なぜか多くのスタッフがオバマ氏の顔写真入りバッジを着けていた。一方の共和党ジョン・マケイン(John McCain)候補はというと、顔写真入りのティッシュ箱が転がっているだけだった。マケイン氏の口の間からティッシュを取り出すデザインのものだ。(c)AFP