【10月12日 AFP】米ジョージア州選出のジョン・ルイス(John Lewis)下院議員は11日、民主党大統領候補のバラク・オバマ(Barack Obama)上院議員を攻撃する際に国民の間に憎悪と分裂を招きかねない扇動的な表現を使っているとして、共和党大統領候補のジョン・マケイン(John McCain)上院議員と同副大統領候補のサラ・ペイリン(Sarah Palin)アラスカ(Alaska)州知事を批判する声明を発表した。

 公民権運動出身の有力下院議員ルイス氏は政治サイトPolitico.comに発表した声明で「マケイン氏とペイリン氏は、国民に大きな影響を与える公的な立場にあるにもかかわらず危険な火遊びを行っている。彼らが注意を欠けばわれわれ全員がこの火に飲み込まれかねない」と述べた。

 ルイス氏は「憎悪と分裂の種をまいている」としてマケイン陣営の手法を批判し、「政治演説に敵意は不要」との考えを示した。

 マケイン陣営のオバマ氏攻撃についてルイス氏は、人種隔離政策を掲げてアラバマ(Alabama)州知事に当選し、大統領選にも出馬した故ジョージ・ウォレス(George Wallace)氏を連想させるとして不快感をあらわにした。1963年にアラバマ州バーミングハム(Birmingham)の黒人信者が集まる教会で爆弾が爆発し少女4人が死亡したのは、ウォレス氏の扇動的な演説が引き金になったとの見方もある。

 ルイス氏は、「ジョージ・ウォレス氏は爆弾を投げたわけでも銃を発砲したわけでもないが、彼は米国憲法が認める権利を行使しようとしただけの罪のない米国人に対して、悪意に満ちた攻撃をけしかける風潮と状況を作り出した」と述べた。

 このところマケイン氏が演説でオバマ氏に言及すると聴衆から「テロリスト」「嘘つき」などといった叫び声が上がるようになっていた。フロリダ(Florida)のある選挙集会では「やつを殺せ!」という声さえ上がった。

 このような状況を憂慮しマケイン氏は10日、支持者に冷静になるよう求めていた。しかし、ルイス氏の声明については「ペイリン氏と私への不快で常軌を逸した人格攻撃」だと反発した。

 またマケイン氏は、オバマ氏の経歴への批判とウォレス氏の人種隔離政策を関連づけることに強く反発。ルイス氏の声明は本選挙を24日後に控えたこの時期に論戦をできなくすることを狙ったものだと主張し、オバマ氏に対しルイス氏の声明内容を即刻拒絶するよう要求した。

 これに対しオバマ陣営の広報担当、ビル・バートン(Bill Burton)氏は、オバマ氏は、マケイン氏の演説内容とウォレス氏が掲げた政策に関係があるとは思っていないとしながらも、「マケイン陣営がオバマ氏攻撃の際に用いた憎悪に満ちた表現をルイス氏が非難するのは妥当なことだ。マケイン氏自身もそのような表現を厳しく断罪している」と述べた。(c)AFP