【10月5日 AFP】脳卒中を発症したとみられている北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル、Kim Jong-Il)総書記(66)の動静が前日、51日ぶりに報じられた。観測筋は、同総書記の体調が戻り、権力の座に復帰したというメッセージだと受け止めている。
 
 4日の朝鮮中央通信(Korean Central News Agency)は、金総書記が金日成総合大学(Kim Il-Sung University)の創立記念日に行われた学生サッカーの試合を観戦したと報じた。

 北朝鮮のラジオ、テレビは5日も、金総書記観戦のニュースを伝えている。ただし、韓国聯合(Yonhap)ニュースによると、写真や映像を使った報道はいっさいない。

 ソウル(Seoul)の高麗大学校(Korea University)で北朝鮮分析を専門とするキム・ヨンヒュン(Kim Yong-Hyun)教授は「金総書記は、共和国(北朝鮮)はまったく問題ないというメッセージを内外に送っている。彼は大々的に復活を演出するのではなく、自然な復帰を選択したといえる。北朝鮮に問題がないように見せるためよく計算されている」と言う。今後、金総書記の動静についての報道は徐々に増えていくだろうと同教授は予測する。

 しかし、匿名を条件にAFPの取材に応じた韓国政府系シンクタンクのアナリストは、報道に映像が使用されていなかったことから、総書記が実際に観戦したかどうかは疑わしく、映像が出ない限り健康悪化説は消えないばかりか、より大きくなるだろうと語った。

 韓国の民間シンクタンク「世宗研究所(Sejong Institute)」の北朝鮮担当上級アナリスト白鶴淳(ペク・ハクスン、Paik Haksoon)氏は「朝鮮中央通信の報道は、総書記の健康に関する国民の不安を払しょくする効果があるだろう」と聯合(Yonhap)ニュースに語った。

 金総書記が父親の金日成(キム・イルソン、Kim Il-Sung)主席の後を引き継いだのは1997年。健康に問題があるとの憶測が長年流れるなか、自らの後継者はこれまで指名していない。(c)AFP/Jun Kwanwoo