【9月30日 AFP】韓国の李明博(イ・ミョンバク、Lee Myung-Bak)大統領が、北朝鮮脱出者(脱北者)のための避難施設をタイなど周辺の第三国に設ける案を推進している。与党ハンナラ党(Grand National PartyGNP)の洪政旭(ホン・ジョンウク、Hong Jung-Wook)議員が30日、明らかにした。

 洪議員によると、李大統領の今年3月の指示に従い、韓国政府は関係各国と避難所建設へ向けて交渉にあたっている。

 鴨緑江(Yalu River)を国境として北朝鮮と向かい合う中国北東部には、厳しい食糧難や圧制を逃れて北朝鮮から国外脱出した数万人が、身を潜めて暮らしているとみられている。中国側は北朝鮮政府と、こうした亡命者を出稼ぎ労働者として本国送還する協定を結んでいるが、帰国すれば厳重な懲罰を受ける可能性が高く、韓国への定住を希望して中国から第三国へ出国するケースが多い。

 こうした人々の多くは「地下鉄道」と呼ばれる危険な旅程をたどり、中国を抜けてタイやそのほかの東南アジア諸国へ脱出するが、それらの国の収容施設はすでに満杯だ。

 李大統領は3月15日、「国連(UN)に難民認定を働き掛けたり、難民収容所を作るなどして、タイにいる脱北者の問題解決」に向けて努力を強めるよう内閣に指示した。

 洪議員によると、李大統領は3月26日にも「中国が脱北者を政治難民だと認定することを拒否し続けるならば、わが国はモンゴルやロシアなどほかの国々と、難民施設の設置について交渉すべきだ」とも述べた。洪議員からはAFPに大統領の指示の写しがメールで届いた。

 洪議員は具体的な国名に触れることを避けたが、韓国政府はすでに複数の政府と協議に入っており、前向きに進展しているという。タイはすでに国連難民条約の批准国で、モンゴルも批准する準備ができている。

 過去にも歴代の韓国政府から同様の動きがあったが、関係国の抵抗にあったと聯合(Yonhap)ニュースは伝えている。

 8月の胡錦涛(Hu Jintao)中国国家主席との首脳会談の際、李大統領は中国側の脱北者に対する強制送還方針の変更を求めた。中国の方針には人権団体らからも強い非難が巻き起こっている。

 1953年の朝鮮戦争休戦以来、北朝鮮から韓国には約1万4180人が脱出したとみられているが、その多くは近年の脱北者とされる。(c)AFP