【9月11日 AFP】ジョージ・W・ ブッシュ(George W. Bush)米大統領は7年前、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)の指導者ウサマ・ビンラディン(Osama bin Laden)容疑者を「生死を問わず」捕まえると宣言した。

 残り任期5か月を切るブッシュ政権が、次期大統領が決定される11月の米大統領選までに、神出鬼没のイスラム原理主義者であるビンラディンを捕捉しようと必死だという風評もあるが、当のブッシュ大統領はそうした見方を否定している。

 大統領は6月にスカイ(Sky)TVに対し「新聞の見出しで『ブッシュがウサマ・ビンラディンの特別追跡を命じた』などというのを見たが、少々メディアの過呼吸状態ではないか。そんなことは2001年の9月11日から、われわれがやっていることだ」と述べた。1月には、フォックス・ニュース(Fox News)に対し、「彼はほかの大統領にとらえられるだろう」と述べ、もはや自分の任期中のビンラディン拘束はあきらめたと受け取れる発言をした。

 もし大統領がビンラディンをとらえないまま任期が終了することを後悔しているとすれば、自分が掲げた「テロとの戦い」に関して政敵・民主党に対し、「民主党指導者たちは反戦市民団体のムーブ・オン(MoveOn)やコードピンク(Code Pink)の要求に耳を貸す時間を減らし、ウサマ・ビンラディンのようなテロリストらからの警告にもっと注意を向けるべきだ」と批判したりはしなかっただろう。
 
 民主党は、ブッシュ大統領がアフガニスタン攻撃からイラクのサダム・フセイン(Saddam Hussein)政権打倒へと目標を移したことで兵力、資金などがイラクへまわり、ビンラディンがさらに奥地のパキスタンとの国境地帯に逃走することを許してしまったと批判してきたが、ブッシュ政権はこれに反論してきた。

■ビンラディン捕捉をめぐり激論のオバマ、マケイン両氏

 11月の大統領選に向けて、民主党、共和党の各候補となったバラク・オバマ(Barack Obama)上院議員とジョン・マケイン(John McCain)上院議員ともに、自らが大統領となったほうが「テロリストの首領」ビンラディンの拘束に近づくといって譲らない。

 オバマ氏は8月下旬「マケイン議員が9.11テロの数日後、イラクに照準を合わせていた時、わたしは立ち上がりこの戦争に反対した。われわれが直面している真の敵から目がそらされてしまうと分かっていたからだ」と述べた。さらに「ジョン・マケインは、『地獄の門』までビンラディンを追跡すると言うだろう。しかし、ビンラディンが生きて住んでいる洞穴へさえ、マケインが行くことはないだろう」と非難した。

 一方、マケイン氏は10日、「(民主党のビル・)クリントン前大統領には、ウサマ・ビンラディンをとらえる機会があった。(共和党の)ブッシュ大統領にもその機会はあった。けれど、実際にとらえる方法を知っているのが、わたしだ。そしてやり遂げてみせる」とABCテレビの番組で反撃した。

 ブッシュ大統領が「生死を問わず」と、芝居のような表現でビンラディンの拘束を約束し、国際社会に「テロとの戦い」を宣言し、呼び掛けたのは、アルカイダが史上最悪のテロ攻撃を行った2001年9月11日から6日後だった。国防総省での会見で、ビンラディンに死んで欲しいかとの質問に大統領は「わたしが求めるのは正義だ。昔の西部のポスターにあっただろう。『お尋ね者:生死を問わず』と」と答えた。

 その6か月後の2002年3月、ブッシュ大統領の焦点はすでにイラクへ移っていた。報道陣を前にビンラディンよりも「テロとの戦い」のほうが重大と述べ「あの男(ビンラディン)については本当にそれほど気にしていない」とさえ言った。

■発言に後悔もみえる退任間近のブッシュ大統領

 9.11テロから6年、「戦時中」の指導者の背後に結集した世論の支えを受け、上がりに上がったブッシュ大統領の支持率は、ビンラディンが逃走を続けている今、今度は記録的に下がっている。

 ブッシュ大統領は今、任期中のほかの発言に加え、表現力豊かではあるが「間の悪い」一句として、あのとき述べた「生死を問わず」というフレーズを挙げ口にしたことを後悔している。

「生死を問わず」発言について、6月にやはりスカイTVに出演し、公衆の前で「真剣になんてちっとも聞こえなかった」と、米開拓時代西部の荒くれ者のような正義感をかざした夫を批判したローラ・ブッシュ(Laura Bush)夫人は手厳しかった。

 同じインタビューでブッシュ大統領本人も「これでは『わたしは戦争が好きだ』と言っているようなものだ。本当は、嫌いなのに」と同意した。(c)AFP/Olivier Knox