【9月5日 AFP】タイの首都バンコク(Bangkok)で反政府市民団体「民主市民連合(People's Alliance for DemocracyPAD)」が首相府占拠を続けるなか、サマック・スントラウェート(Samak Sundaravej)首相は打開策として国民投票の実施を発表したが、これを支持する声は少ない。

 サマック首相は4日、こう着状態の打開を目指し、国民が政権とPADのどちらを支持するか国民投票で問うと発表。プラソプスク上院議長は、状況は切迫しており問題の迅速な解決が必要だと述べ、準備期間を考慮すると国民投票の準備には少なくとも1か月後はかかると記者らに説明した。

 しかし、国民投票は混乱を引き延ばすだけでなく、2日未明に発生し死傷者を出した反政府派と親政府派の衝突のような、新たな暴力を招く恐れがあるとの見方が多い。

 野党・民主党のアピシット・ウェーチャチーワ(Abhisit Vejjajiva)党首は、「タイ・ラット(Thairath)」紙(電子版)上で、国民投票でこう着状態は解決できないと述べ、解散総選挙を呼びかけた。アピシット党首は議会でも同様の要求をしたが、サマック首相は強硬に反対した。

 一方、タイ国民の間でも、PADの首相府占拠にタイする見方は割れている。主要16県で実施した世論調査では、PAD支持は半数の50%で、タイ国内の断絶を浮き彫りにした。

 従来からの富裕層や中流層がPADを支持する一方、人口の多い農村部などの貧困層はサマック首相を支持している。

 タクシン・シナワット(Thaksin Shinawatra)元首相は、農村部で選挙運動を展開した初めての有力政治家で、低利息融資や無料医療サービスなど、貧困層向けに手厚い政策を導入した。しかし、2006年にタクシン氏の政策に不満を持ったPADが展開した大規模な抗議活動を機に軍による無血クーデターが起き、政権の座を追われた。

 サマック現首相はタクシン派であることから、PADは同首相を「タクシンの操り人形」などと批判。現在の選挙制度は貧困層の影響を強く受けすぎるとして、タクシン派が再び政権をとることがないよう選挙制度の改正を求めている。(c)AFP/Griffin Shea