専門家「欧米諸国はコソボのつけをグルジアで払うことに」
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【8月22日 AFP】(23日一部修正)ロシアがグルジアの南オセチア(South Ossetia)自治州とアブハジア(Abkhazia)自治共和国の独立を承認する場合、おそらく欧米諸国が今年コソボの独立への動きを支持した事実が重要な論拠となるだろうと専門家は指摘する。
ロシア軍がグルジアの首都トビリシ(Tbilisi)まで30キロに迫っても、欧米諸国はグルジアの主権と領土保全を再三にわたり擁護してきた。しかしロシア政府は、米国やフランスなど欧米諸国と同様に、在外自国民を保護しているのだと主張している。
ロシアの政治指導者はコソボの例を取り上げる。コソボはロシアの同盟国セルビアから一方的に独立を宣言し、米国や欧州連合(EU)加盟国約20か国などはこれを承認した。ロシアのドミトリー・ロゴジン(Dmitry Rogozin)北大西洋条約機構(NATO)常駐代表は「コソボを承認することで、彼らはパンドラの箱を開けてしまった」と語る。
欧米諸国はコソボと南オセチアを同列視することを強く否定している。ある英外交官は「コソボには国連(UN)が駐留していた。民族浄化の問題があり、交渉が行き詰まっていて交渉による解決のめどは立っていなかった。さまざまな要因が重なり合っている」と話す。
しかしベルギーのCenter for Security and Defence StudiesのAlain De Neve氏は、欧米諸国が望まなくても、ロシアとグルジア両政府はコソボと南オセチアを関連付けたと指摘する。
「コソボ独立問題がなければ(グルジアの)話がこれほど早く展開することはなかっただろう。コソボの独立を承認しなかった国々は、それをきっかけにさまざまな地域で独立が宣言されることを何よりも恐れていた。しかしそれが、自国領土全体を掌握したいグルジアの介入を引き起こしたのだ」
フランスのFrench Institute of International RelationsのThomas Gomart氏も、「ロシアの動きの背景には、コソボにおける欧米諸国の行動がある。欧米諸国は1999年、ロシア政府の反対にもかかわらず国連の承認なしに軍事介入し、今度は独立を承認した」と考えている。
しかしGomart氏は、アブハジアと南オセチアの独立承認についてロシアは二の足を踏むだろうとみている。コソボの一方的な動きに反対したのと同様、ロシアはチェチェン(Chechen)共和国などロシア連邦内での独立の機運を促すことは避けたい。Gomart氏によるとロシアは「(南オセチアとアブハジアを)不明瞭な状態にしておき、いつでも好きなときに介入できるようにしておくこと」により関心があるという。
Bruno Coppieters教授(政治学)は、グルジア問題はより大きな枠組みの中で解決されるべきだと考えている。「ロシアが(南オセチアとアブハジアを)承認しても、多くの国々が後に続くことは期待できない。欧米諸国もロシアに効果的な圧力を掛ける手段を持っていない」
Coppieters教授は「紛争状態が再び凍結されるのが最も可能性の高いシナリオだ。長期的には国連安全保障理事会(UN Security Council)常任理事国の間で幅広い合意が必要となるだろう」と語った。(c)AFP
ロシア軍がグルジアの首都トビリシ(Tbilisi)まで30キロに迫っても、欧米諸国はグルジアの主権と領土保全を再三にわたり擁護してきた。しかしロシア政府は、米国やフランスなど欧米諸国と同様に、在外自国民を保護しているのだと主張している。
ロシアの政治指導者はコソボの例を取り上げる。コソボはロシアの同盟国セルビアから一方的に独立を宣言し、米国や欧州連合(EU)加盟国約20か国などはこれを承認した。ロシアのドミトリー・ロゴジン(Dmitry Rogozin)北大西洋条約機構(NATO)常駐代表は「コソボを承認することで、彼らはパンドラの箱を開けてしまった」と語る。
欧米諸国はコソボと南オセチアを同列視することを強く否定している。ある英外交官は「コソボには国連(UN)が駐留していた。民族浄化の問題があり、交渉が行き詰まっていて交渉による解決のめどは立っていなかった。さまざまな要因が重なり合っている」と話す。
しかしベルギーのCenter for Security and Defence StudiesのAlain De Neve氏は、欧米諸国が望まなくても、ロシアとグルジア両政府はコソボと南オセチアを関連付けたと指摘する。
「コソボ独立問題がなければ(グルジアの)話がこれほど早く展開することはなかっただろう。コソボの独立を承認しなかった国々は、それをきっかけにさまざまな地域で独立が宣言されることを何よりも恐れていた。しかしそれが、自国領土全体を掌握したいグルジアの介入を引き起こしたのだ」
フランスのFrench Institute of International RelationsのThomas Gomart氏も、「ロシアの動きの背景には、コソボにおける欧米諸国の行動がある。欧米諸国は1999年、ロシア政府の反対にもかかわらず国連の承認なしに軍事介入し、今度は独立を承認した」と考えている。
しかしGomart氏は、アブハジアと南オセチアの独立承認についてロシアは二の足を踏むだろうとみている。コソボの一方的な動きに反対したのと同様、ロシアはチェチェン(Chechen)共和国などロシア連邦内での独立の機運を促すことは避けたい。Gomart氏によるとロシアは「(南オセチアとアブハジアを)不明瞭な状態にしておき、いつでも好きなときに介入できるようにしておくこと」により関心があるという。
Bruno Coppieters教授(政治学)は、グルジア問題はより大きな枠組みの中で解決されるべきだと考えている。「ロシアが(南オセチアとアブハジアを)承認しても、多くの国々が後に続くことは期待できない。欧米諸国もロシアに効果的な圧力を掛ける手段を持っていない」
Coppieters教授は「紛争状態が再び凍結されるのが最も可能性の高いシナリオだ。長期的には国連安全保障理事会(UN Security Council)常任理事国の間で幅広い合意が必要となるだろう」と語った。(c)AFP