ブッシュ政権の対イラン外交、「悪の枢軸」から大転換
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【7月17日 AFP】イランと欧州連合(EU)が今週末に予定するイランの核開発問題をめぐる協議に、米国が参加を表明したことは、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)政権が対北朝鮮政策で実利外交に転じたのと同様に、「悪の枢軸」と呼んだイランに対する外交方針の大きな転換だとみられている。
ブッシュ政権は、イランとの協議に着く前提条件として、長らくイラン側がまずウラン濃縮活動を停止すべきだとしてきたが、今回の参加表明は、この条件を実質的に取り下げたことを意味する。
これについて、米国の核拡散防止問題の専門家ジョセフ・シリンシオーネ(Joseph Cirincione) 氏は「ブッシュ政権外交の劇的な転換。2006年に北朝鮮への姿勢を変化させた時と似ている」とAFPに語った。
米国は、それまで維持してきた強硬路線では、北朝鮮初の核実験を実施することを阻止できなかったことから、2006年10月、中断していた北朝鮮の核問題をめぐる6か国協議への復帰を宣言している。
平和推進関連の基金「プラウシェアズ・ファンド(Ploughshares Fund)」の理事長も務めるシリンシオーネ氏は、イラン、北朝鮮どちらの場合でも「ブッシュ政権は敵とみなした国との直接対話を拒否してきた」と振り返る。
しかし、6か国協議は再開後に進展を見せ、北朝鮮は6月、同協議の合意に基づき核計画の申告書を提出、核冷却塔を爆破するなど核計画放棄に向けた行動を示している。
北朝鮮の完全な非核化までの道のりが遠いことは米政権も認めているが、北朝鮮の孤立化を求める政権内の保守派には屈しない政策方針が確立されたといえる。
「北朝鮮とイラン問題をめぐっては、(ブッシュ政権)発足時から、交渉による解決を推すプラグマティスト(実利主義派)と、これら政権の崩壊を期待する強硬派が対立してきた。しかし、近年の対北朝鮮外交においてはプラグマティスト側が最終的に勝利したことから、これが対イラン外交にも波及したのではないか」とシリンシオーネ氏は分析する。
国務省出身で、米シンクタンク・ブルッキングス研究所(Brookings Institution)のイラン専門家、スザンヌ・マロニー(Suzanne Maloney)氏はAFPに対し、米政府の新しい外交方針は特筆すべきではあるが、核問題をめぐる交渉にイランを引き込むという長年の戦略路線から外れるものではないと語った。
米政府のイラン問題における今後の動きは、対北朝鮮の場合と同様に展開するのかとの質問にマロニー氏は、現段階ではこの方針転換が決定的なものかどうかは不明だと答えた。
また、EUとイランの協議にウィリアム・バーンズ(William Burns)国務次官(政治担当)を派遣することを決定しながらもイランとの直接交渉はさせないとする米政府の姿勢を、「奇妙な境界線の引き方だ。せっかくの成果が生まれる機会を阻害しかねない」とマロニー氏は批判する。
その一方で、「そうは言っても、イランの外交官と直接対話するということ自体が大きな改善だ」と付け加えた。(c)AFP/Lachlan Carmichael
ブッシュ政権は、イランとの協議に着く前提条件として、長らくイラン側がまずウラン濃縮活動を停止すべきだとしてきたが、今回の参加表明は、この条件を実質的に取り下げたことを意味する。
これについて、米国の核拡散防止問題の専門家ジョセフ・シリンシオーネ(Joseph Cirincione) 氏は「ブッシュ政権外交の劇的な転換。2006年に北朝鮮への姿勢を変化させた時と似ている」とAFPに語った。
米国は、それまで維持してきた強硬路線では、北朝鮮初の核実験を実施することを阻止できなかったことから、2006年10月、中断していた北朝鮮の核問題をめぐる6か国協議への復帰を宣言している。
平和推進関連の基金「プラウシェアズ・ファンド(Ploughshares Fund)」の理事長も務めるシリンシオーネ氏は、イラン、北朝鮮どちらの場合でも「ブッシュ政権は敵とみなした国との直接対話を拒否してきた」と振り返る。
しかし、6か国協議は再開後に進展を見せ、北朝鮮は6月、同協議の合意に基づき核計画の申告書を提出、核冷却塔を爆破するなど核計画放棄に向けた行動を示している。
北朝鮮の完全な非核化までの道のりが遠いことは米政権も認めているが、北朝鮮の孤立化を求める政権内の保守派には屈しない政策方針が確立されたといえる。
「北朝鮮とイラン問題をめぐっては、(ブッシュ政権)発足時から、交渉による解決を推すプラグマティスト(実利主義派)と、これら政権の崩壊を期待する強硬派が対立してきた。しかし、近年の対北朝鮮外交においてはプラグマティスト側が最終的に勝利したことから、これが対イラン外交にも波及したのではないか」とシリンシオーネ氏は分析する。
国務省出身で、米シンクタンク・ブルッキングス研究所(Brookings Institution)のイラン専門家、スザンヌ・マロニー(Suzanne Maloney)氏はAFPに対し、米政府の新しい外交方針は特筆すべきではあるが、核問題をめぐる交渉にイランを引き込むという長年の戦略路線から外れるものではないと語った。
米政府のイラン問題における今後の動きは、対北朝鮮の場合と同様に展開するのかとの質問にマロニー氏は、現段階ではこの方針転換が決定的なものかどうかは不明だと答えた。
また、EUとイランの協議にウィリアム・バーンズ(William Burns)国務次官(政治担当)を派遣することを決定しながらもイランとの直接交渉はさせないとする米政府の姿勢を、「奇妙な境界線の引き方だ。せっかくの成果が生まれる機会を阻害しかねない」とマロニー氏は批判する。
その一方で、「そうは言っても、イランの外交官と直接対話するということ自体が大きな改善だ」と付け加えた。(c)AFP/Lachlan Carmichael