【6月23日 AFP】米大統領選で共和、民主各党の候補指名が確定したジョン・マケイン(John McCain)、バラク・オバマ(Barack Obama)両上院議員はともに対中国強硬策を唱えるが、専門家らの分析によれば、実際に政権の座についた場合は2人とも、たとえ中国が急速に軍備拡張と経済発展を押し進めても、対決姿勢を取ることはないだろうとの見方が強い。

■経済大国・中国との対立は不利

 近年、米国では不透明な軍備拡張や通貨政策、人権侵害などをめぐって中国に厳しい目が向けられている。特に軍備拡張政策は、アジア安全保障で長く支配的な役割を担ってきた米国の役割を、5年以内に脅かすとさえ言われている。

 しかし、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)大統領やその先人たちは、著しい経済発展を遂げるアジアの大国である中国とは良好な関係を構築する政策をとってきた。専門家の間では、マケイン、オバマの両氏も、この路線を踏襲するとの見方が大勢だ。

 米国の対中戦略について、米ワシントンD.C.(Washington D.C.)の保守系シンクタンク「ヘリテージ財団(Heritage Foundation)」の中国専門アナリスト、ジョン・タシック(John Tkacik)氏は、「中国のような強大な経済大国とは、必要がないかぎり敵対しないことが得策だ」と指摘する。

■マケイン氏の切り札は日本か

 タシック氏はまた、オバマ氏が米中関係を安全保障の観点からはとらえていない点に注目、「オバマ政権」は良好な米中関係を築くため、アジアにおける中国覇権を容認する方向に動くと見る。一方、「マケイン政権」はアジアにおける米国の覇権維持を最重要戦略目標と位置づけるだろうと言う。

 オバマ氏のアジア戦略ブレーンは、中国に詳しいベテラン外交官のジェフリー・ベーダー(Jeffrey Bader)氏。対するマケイン氏のブレーンは、リチャード・アーミテージ(Richard Armitage)元国務副長官だ。

 戦略国際研究センター(Center for Strategic and International StudiesCSIS)のボニー・グレイザー(Bonnie Glaser)氏は、「マケイン政権」のアジア戦略では、日本が基軸となる可能性があると指摘、最近のマケイン陣営のコメントを根拠として上げる。

 最近のブッシュ政権は米中関係を重視し、日本側からはアジア地域での2番手に引き下げられたとの懸念の声もあがっていた。

■米中を基軸とした新たな国際的枠組みの提唱も

 ブッシュ政権では、政治面での定期高官協議と経済面での戦略対話との2つの枠組みの下で、関係を強化してきた。

 ただ、米シンクタンクのピーターソン国際経済研究所(Peterson Institute for International Economics)のフレッド・バーグステン(Fred Bergsten)所長は、2つの枠組みはプロセスであり、結果につながっていないとして、新政権誕生の暁には米中間で主要8か国(G8)首脳会議に相当する首脳レベルの対話システムの設置を提言する。

 バーグステン所長は新システムを「G2」と名付け、米中の2大経済大国が協調すれば、国際的な課題を効率的に解決できるだろうと述べた。(c)AFP