【6月16日 AFP】王制が廃止され、共和制へ移行したネパールで、国王が明け渡したばかりのナラヤンヒティ(Narayanhity)旧王宮が15日、「ナラヤンヒティ王宮博物館」に生まれ変わり、美しい芝生の庭で開館を記念する大規模な茶会が催された。

 記念式典では、第1党のネパール共産党毛沢東主義派(毛派)のメンバーや軍高官らが見守る中、ギリジャ・プラサド・コイララ(Girija Prasad Koirala)首相が、国のものとなった旧王宮の桃色の建物に国旗を掲揚した。

 毛派の古参活動家Ramraja Prasad Singh氏(73)がこの庭に足を踏み入れるのは3度目だが、自由の身で訪れたのは今回が初めてだという。Singh氏は1985年にカトマンズ(Kathmandu)の王室関連の像を爆破した。「1971年に罪人として連れてこられた時には、マヘンドラ国王(King Mahendra)が面会したが、彼はわたしを買収しようとした。わたしは、自分は売り物ではないと拒絶した」

 5月末、毛派が第1党となったネパール議会は立憲君主制を廃止。旧反政府勢力の毛派と当時の主流党派との間で2年に及び難航していた和平交渉は、頂点に達した。ギャネンドラ元国王(King Gyanendra)は前週、王宮を退去し、一国民となった。

 博物館の開会式に次々と乗りつけられた各国大使館の磨き上げられた車とは対照的に、毛派の指導者たちは戦闘の跡が刻まれた車にすし詰めになって到着した。

 15日の式典は、1960年代に共和制化運動を開始した活動家である前述のSingh氏にとって、その長い道のりの終わりでもあった。「わたしの人生における目標や指命のすべては、王制の打倒だった。わたしは決して誰かの家来や奴隷になりたくなかった。しかし、この日が来るとは確信していなかった」

 旧王宮の外では、宮殿の保安要員たちの支援を得た警官らが、数百人の招待客を次々と招き入れる様子を、鉄柵のすき間から大勢の見物人が眺めようと殺到した。

 博物館は今後1か月ほどで一般公開されるが、ダイヤモンドとエメラルドに金をあしらった王冠から、ナチス・ドイツの独裁者アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)がギャネンドラ元国王の祖父の時代にネパール王室に寄贈した高級車メルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz)まで、多くの品が展示される。

 毛派政権の閣僚の1人、Hishila Yami氏は、大切なのは展示品ではなく、この建物が今は国民に帰属したことだ、と述べた。少なくとも1万3000人が死亡したといわれる内戦に言及し「ここに立つと、歴史の新しい一幕が訪れたと感じさせられる。命を犠牲にした人、投獄されたり拷問されたりした人々への思いをかきたてられる。一般のネパール国民がこの宮殿に立ち入り、宮殿は自分たちのものだと言える日がやって来て、犠牲となった人々も喜ぶだろう」(c)AFP/Subel Bhandari