【5月29日 AFP】スウェーデンのストックホルム(Stockholm)で29日に開催されたイラクの安定化に関する国際会議で、潘基文(パン・キムン、Ban Ki-moon)国連事務総長とコンドリーザ・ライス(Condoleezza Rice)米国務長官が「情勢に改善があった」とそろって称賛し、債務救済を求めるイラクにとっては好材料となった。
 
 1日限りの今回の会議は、前年5月に採択されたイラクの安定と経済開発に関する5か年計画「イラク・コンパクト(International Compact with IraqICI)」以来初の国際会議で、潘事務総長とイラクのヌーリ・マリキ(Nuri al-Maliki)首相が主催した。ICIを採択した前年の「イラク安定化会議」では60以上の政府、国際機関などの閣僚、高官らが集まり、イラクに300億ドル(約3兆1520億円)相当の債務取り消しを約束した。

 潘事務総長は29日の演説で「われわれが最も恐れていた地獄のふちからイラクは後退しつつある」と述べ、国際社会の協力があれば、戦争に疲弊したイラクが「自由で安全な、そして安定した繁栄国家になる展望」を実現できるだろうと付け加えた。ただし、状況がいまだもろい点にも注意を促した。
 
 ライス米国務長官は、イラクでは良い進展がみられる一方で「達成する必要があるものすべてが達成されたわけではない」と述べ、課題が残っている点に留意した上で国際社会、特に周辺のアラブ諸国を中心に、外交や経済関係の再確立を訴えた。

 またライス長官は、スコット・マクレラン(Scott McClellan)元米大統領報道官がイラク戦争について、大統領側近らが国民を「不必要な戦争に欺き導いた」と近刊の回想録で展開している批判に触れ、「(フセイン大統領が)大量破壊兵器をもっていると信じたのは、合衆国だけではなかった」とブッシュ政権の従来の弁論を繰り返した。

 マリキ首相は、イラク国内の全地域で長期的安定の創造に向けて大きな進展があったと強調し、さらに「フセイン政権に課された国際制裁が復興と開発を妨害している」と述べ、各国の指導者らに、制裁の解除と債務の取り消しを訴えた。

 イラク政府によると、イラクが抱える対外債務合計は、利子を除外して約1400億ドル(約14兆7250億円)。うちサウジアラビアが100億ドル(約1兆500億円)、クウェートがそれをやや下回る額の債権国となっている。(c)AFP/Pia Ohlin