【5月1日 AFP】北京五輪の聖火リレーは2日、香港を皮切りに開催地・中国の国内巡回が開始されるが、香港当局は海外の人権活動家らの入境を拒否しており、外交筋や運動団体が懸念している。

 聖火は中国最初のリレー地となる香港に30日到着。2日のリレー開始を前に最終準備が進んでいる。これまでに巡回してきた世界各地の都市では、チベット(Tibet)自治区の暴動に対する中国政府の対応や、同国の人権問題をめぐり、デモなどの抗議行動に繰り返し阻まれた。

 中国本土に入れば言論に対する規制が強まるため、比較して寛容な香港で行われる2日の聖火リレーは、さまざまな問題で中国政府を批判する人々にとって、リレーにあわせて抗議を表明する最後の機会となりうる。

■ダルフール問題で中国批判の俳優ミア・ファローさん到着

 2日を控え、海外の人権活動家らは香港入りを目指しているが、これまでに入境を拒否される例も相次いでいる。

 米国の俳優で人権活動家のミア・ファロー(Mia Farrow)さんは1日夕方、香港に到着した。ファローさんは、スーダンのダルフール(Darfur)紛争に対する中国政府の影響を指摘しているが、何も問題なく入国できたと述べた。

 ファローさんは「彼らは、わたしたちが聖火リレーの妨害のためにここに来たのではないということをはっきりさせたがっただけ。もちろん、妨害に来たのではない」と、香港の空港でインタビューに答えた。

 ファローさんは2日、「ダルフールと五輪」と題した講演を行う予定。「スーダン政府に圧力をかけるため、中国政府は何をすべきだと思うか」との問いには、「空爆と地上戦を停止」し、国際平和維持軍を受け入れるようスーダンの指導者たちに圧力をかけることができるだろうと述べた。

■海外活動家ら13人が入境できず

 しかし、外交筋や運動団体らによると、聖火リレーを前にこれまでに少なくとも13人が香港入りを拒否されている。

 現地の英国領事館が1日、AFPに明らかにした情報では、29日に英国人男性1人が入境しようとし、拒否された。また同じく英国人でチベット支援国際団体「フリー・チベット・キャンペーン(Free Tibet Campaign)」の広報担当であるMatt Whitticase氏も今週入境を拒否され、英国へ帰還を余儀なくされたという。

 英領事館広報官は「香港保安局長官と会見し、なぜ2人の英国人が入境できなかったのか明らかにしたい。また、29日に香港に到着した男性は空港で拘束されたままで、領事館と連絡を取れるようにしたい」と述べた。

 現地の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(South China Morning Post、南華早報)によると、欧州委員会(European Commission)も入境拒否の件で、高官レベルと香港特別区行政府側との接触を試みるとみられている。

 このほかにも29日には、デンマークの彫刻家で人権活動家のJens Galschiotさんとカナダ人のチベット支援運動家2人の計3人、また30日にはほか2人が相次いで拒否されている。

 香港記者協会(Hong Kong Journalist Association)によると、言論の自由を訴える集会へ出席を予定していた中国籍の作家Zhang Yu氏も29日、活動拠点としているスウェーデンへ送還された。同集会の広報担当によると、反体制派の作家Zhao Dagong氏を含む本土からの集会出席予定者5人も香港入りできなかった。

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)は、香港当局は公共秩序の維持に関する懸念を、「表現、結社、集会の自由という基本的人権」を弾圧する口実にすべきでないと糾弾した。(c)AFP/Guy Newey