【4月15日 AFP】(写真追加)五輪開催国・中国の人権問題が取りざたされる中、過去3大会の砲丸競技でメダリスト全員のための砲丸を製作した日本の職人、辻谷政久(Masahisa Tsujitani)さん(75)が、「五輪ボイコット」を決めている。

 辻谷さんは14日、AFPの取材に対し「はっきりいわせてもらうと、中国にオリンピックやる資格ない」と語った。人権を軽視しつつ、平和的なスポーツ・イベントの開催国となることは矛盾しているという。

「砲丸は、そりゃ大事ですよ。自分の気持ち、真心が入ってる品物なんです。選手には申し訳ないけど、これは職人の意地です」

 辻谷さんはこの数年、中国で開催されたサッカー国際大会での日本選手に対するブーイングや同国での反日デモを見て、前年11月には北京五輪に自作の砲丸を提供しないことを決めていたという。最近のチベット問題などへの中国政府の対応を見て「自分の決断が正しかったと再確認している」という。

 辻谷さんの砲丸作り歴は40年。旋盤を使用し、砲丸を手作りする世界で唯一の職人とされている。通常の砲丸はコンピューター制御された機械で作られている。

 1996年のアトランタ五輪、2000年のシドニー五輪、2004年のアテネ五輪の3大会の男子砲丸投げ金・銀・銅メダリストらは全員、辻谷さんの砲丸を使用してメダルを獲得した。辻谷さんのボイコットによって、北京五輪の砲丸投げの飛距離記録は縮まるだろうと予測する報道もある。

 辻谷さんの決断に対し、100件を超える反応が届いた。うち1件は選手のために翻意を促すものだったが「ほかはすべて賛成」する内容だったという。

 中国政府との関係修復に努める日本政府は、チベット暴動に対する懸念を示しながらも、五輪のボイコットについては支持しない方針を明らかにしている。(c)AFP