【3月27日 AFP】米国初のインド系アメリカ人知事となり、現役知事の中で最年少のボビー・ジンダル(Bobby Jindal)ルイジアナ州知事(36、共和党)は、それだけにとどまらないようだ。

 1月14日に就任したばかりの知事の名が、ラジオ・パーソナリティーなどとして知られるラッシュ・リンボー(Rush Limbaugh)氏が司会を務める保守派のトークショーで、副大統領候補として浮上したのだ。さらに、うまく立ち回れば立派な大統領になれると指摘する人もいる。

 社会保守派のジンダル氏は減税、歳出削減、妊娠中絶の全面禁止などを公約に掲げ、キリスト教保守派や中流層の白人の間で支持基盤を築いた。

 知事就任後は倫理改革や経済発展への大胆なアプローチなどにより、黒人、リベラル派のほか、古くからの民主党員などからも尊敬を勝ち取っている。

 同知事を「ルイジアナの最後の希望」と呼ぶ民主党のメディア・コンサルタント、Cheron Brylski氏は「ボビー・ジンダルは民主党員の共感を得ている。党員は『ボビー・ジンダルが好きだ。彼が知事で良かった』と言っている」とし、マイノリティー(少数派)の知事を持つことは圧倒的な誇りだと語った。

 ジンダル知事の若さあふれる情熱や、分断された人種や政党を結びつける能力によって、同知事を民主党のバラク・オバマ(Barack Obama)大統領候補の「共和党版」と見なす人もいる。

 政治コンサルタントのAllan Katz氏は「ジンダル知事はオバマ候補のような詩人ではないが、話がうまい」と指摘する。

■成功への道

 同知事は1971年、ルイジアナ州バトンルージュ(Baton Rouge)で、インド北部パンジャブ(Punjabi)州からの移民の両親の元に生まれた。9人兄弟の貧しい一家に生まれエンジニアになった父親は、妻が原子物理学の学位を取得するための勉強を続けられるように、米国に移住した。

 ジンダル知事はわけなく米国文化になじんだ。少年時代にテレビ番組のキャラクターから「ボビー」というニックネームを取り、10代でヒンズー教からローマカトリック教に改宗した。

 ローズ奨学生としてオックスフォード大学(Oxford University)を卒業した政策通のジンダル知事は、24歳でルイジアナ州保健病院局の局長に任命された。その3年後、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領によって、医療保険改革に関する国家的任務の長に抜てきされた。

 2003年の州知事選でキャスリーン・ブランコ(Kathleen Blanco)氏に小差で敗れ、初めての大きな政治的挫折を味わったが、2004年には下院議員に選出され、2006年に再選される。

 一方、2005年のハリケーン「カトリーナ(Katrina)」と「リタ(Rita)」の襲来でニューオーリンズ(New Orleans)が壊滅的打撃を受けたことでルイジアナ州が注目を浴び、州政府の無能力さが露呈。これがジンダル氏の州知事への再挑戦につながった。

 政治コンサルタントのKatz氏は「ボビー・ジンダルは素晴しいスタートを切った。人々の支持を勝ち取る方法、マスコミとのかかわり方、政策を実現するための世論操縦術を知っている」とし、過去数十年でこれほど州知事に人々が熱狂したことはないと指摘する。

 現在、ジンダル知事は生活の質が最低ランクに定着したルイジアナ州を引き上げることに注力している。

 最初に取り組んだのは、同州の政治を長年支配してきた腐敗体制の打破だ。さらに、社会基盤の改善、法人税の削減、ハリケーン対策の強化、沿岸部の復興を目的とする特別委員会を立ち上げた。

「子どもたちが仕事を得るためにルイジアナを去る必要がなく、素晴しいキャリアを築き、夢を追いかけることができるようなチャンスあふれる街とするために、最も基本的な優先課題に集中しなければならない」と知事は指摘する。

 政治コラムニストのJohn Maginnis氏は、ジンダル知事初の立法議会では「粘り強さ」が見られたが、これが彼の統治スタイルかどうかを判断するのは時期尚早だとしている。

 世論調査は発表されていないが、大半の論説記者は少なくとも多少の称賛は表わしている。(c)AFP/Allen Johnson