【3月19日 AFP】(一部更新)米大統領選の民主党候補指名を争うバラク・オバマ(Barack Obama)上院議員は18日、4月22日に予備選挙が行われるペンシルベニア(Pennsylvania)州のフィラデルフィア(Philadelphia)で演説を行い、同氏が師と仰ぐ牧師の問題発言が騒動となっていることから、人種問題や政治再生に対する自身の見解を改めて主張した。

 オバマ氏は米国民に対し、「何年も膠着状態にある人種問題の打開を訴え、同氏が通うシカゴ(Chicago)の教会に在籍していたジェレミア・ライト(Jeremiah Wright)牧師が非常に歪んだ説教を行っていたと批判。「ライト牧師は米国に対し非常に歪んだ見解を持っている。白人による人種差別を我が国特有のものとし、米国の良心よりも欠点を持ち上げている」としたが、20年来の親交がある同牧師との絶縁については否定した。

 ライト牧師の最近の問題発言を含んだ説教は、そのビデオ映像が動画投稿サイト「ユーチューブ(YouTube)」と保守系メディアに掲載されたことから騒動となった。

 映像には、ライト牧師が米国とイスラエルを「テロリスト」と厳しく非難したり、黒人に「ゴッド・ブレス・アメリカ(God Bless America、アメリカに神の祝福がありますように)」ではなく「ゴッド・ダム・アメリカ(God damn America、神がアメリカをのろうように)」を歌うよう訴えたり、アフリカでエイズ(AIDS)をまん延させたのは米国だと主張する姿が写し出されている。

 このことから、オバマ氏の「人種を越える」との訴えが冷めたものとなり、ライバルのヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)上院議員との指名争いで有権者が敬遠する恐れもある。

 オバマ氏は14日、同牧師の問題発言を非難したが、先週末にメディアがこの問題を大きく取り上げたことから、CBSテレビが16、17日に実施した最新の世論調査では、無党派層の3分の1がオバマ氏への信頼度が低下したと答えたことが明らかとなった。

  オバマ氏は演説で、これまで否定していた同牧師の説教上での問題発言について「問題発言を聞いたことはある」と撤回した上で、「彼の政治的見解に強く反対することは多々あった。あなたがたも牧師や司祭、ラビ(ユダヤ教指導者)の発言に賛同できないことがあるだろう」と主張した。

 一方、同牧師はオバマ氏の結婚式や娘2人の洗礼式を執り行うなど、同氏と家族的な付き合いをしている。同氏の著書「合衆国再生-大いなる希望を抱いて(The Audacity of Hope)」の題名も、同牧師の説教から取ったもので、「黒人社会と絶縁できないように、また白人の祖母と絶縁できないように、彼とは絶縁できない」と訴えた。同氏の祖母は時々人種的な発言をしていたという。
 
 この日オバマ氏が演説したのは、奇しくも米国の独立宣言が採択されたフィラデルフィア。同氏は、独立宣言は「奴隷制度という原罪」を持っているとし、「歴史的な過ちを正すときが来た」と訴えた。

 また、「黒人にも白人にも、たった一度の選挙、たった一度候補者になっただけで人種的分断を解決できると考えていると私を批判する人がいるが、私はそれほど世間知らずではない。私のように未熟な候補者ではなおさらだ」、「しかし、私には神への信仰と米国民に対する信頼に基づく堅い信念がある。協力し合えば人種に関わる古傷をいくらか乗り越えることができるし、より完璧な共同体を目指すなら、ほかに道はない」と主張した。

 ライト牧師は前週、オバマ陣営のアフリカ系アメリカ人宗教指導者委員会の名誉会員を辞任した。(c)AFP
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