【3月21日 AFP】約1700万人の有権者が22日に新しい総統を選ぶ台湾では、選挙直前の世論調査が禁じられている。しかし、意外なものが世論調査の不在を補っているようだ。

 その1つがギャンブルだ。台湾では、指定金融機関が販売する宝くじを除いて賭博は違法だが、賭博業者の闇のネットワークが私営カジノ、鳩レース、香港競馬といった賭博を幅広く手がけているのが実態だ。

 総統選も例外ではない。報道によると賭博業者の多くは野党・国民党(KuomintangKMT)の馬英九(Ma Ying-jeou)候補が50万から70万票の差をつけて与党・民主進歩党(民進党、Democratic Progressive PartyDPP)の謝長廷(Frank Hsieh)候補に勝利するとみているという。

 禁止期間前の最後の世論調査結果によると、この時点で馬候補は20ポイント差で謝候補をリードしていた。これまでに賭博業者らが集めた賭け金は、100億台湾ドル(約330億円)に上るという。

 台南(Tainan)の賭博シンジケートに近い人物が匿名を条件にAFPに語ったところよると、馬候補が50万票の差をつけて勝利するとの予測が最も多く、多くの業者はすでに賭けの受付けを締め切ったという。この人物はその理由を詳しく明らかにしなかったが、地元メディアは投票を前に警察の捜索を警戒したためではないかと伝えている。

 一方で合法的な試みもある。著名な物理学者らのグループは「仮想先物市場」を開設し、約3000人の「市場参加者」たちが、次の台湾のリーダーは誰か占っている。

 調査を実施した研究者の1人、中央研究員物理所(Academia Sinica's Institute of Physics)の李世炳(Li Sai-ping)副所長は、このような仮想市場を使った実験では参加者が積極的になるので、一般的な世論調査よりも正確だと語る。接戦となった2004年の総統選でも、陳水扁(Chen Shui-bian)総統の再選を正確に予測したという。

「研究の目的はともかく、参加者してくださった方々には自分の意見を表明する楽しさを感じて欲しいと思っています」と李副所長は語る。仮想市場の参加者は1万台湾ドル(約3万3000円)の賞金を貰えるチャンスがあるそうだ。(c)AFP