【2月25日 AFP】コソボ(Kosovo)自治州の独立宣言の影響で、隣国ボスニア・ヘルツェゴビナが分裂の危機に揺れている。「ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦」とともに同国を構成する「セルビア人共和国(スルプスカ共和国、Republika Srpska)」が独立を目指す動きを見せているためで、単一国家の維持を国際社会の支援に頼っている同国のもろさが浮き彫りになっている。

 セルビア人共和国議会は22日、国連(UN)と欧州連合(European UnionEU)の加盟国の多くがコソボ独立を承認した場合、セルビア人共和国も「住民投票によって共和国の国家としての地位を見直す権利を有する」との決議を、圧倒的賛成多数で採択した。

 ボスニア・ヘルツェゴビナは、ボスニア紛争(1992-95年)を終結させた「デートン合意(Dayton peace agreement)」に基づき、イスラム教徒とクロアチア系勢力で構成する「ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦」と「セルビア人共和国」が並立する単一の主権国家。国会や行政府は両勢力の共同運営で、議会議員も連邦と共和国の各議会から選出され、内閣は連邦と共和国の3民族代表で構成する幹部会により指名される。

 セルビア人共和国の住民の多くは隣国セルビア共和国を「祖国」と見なしており、コソボに続いてボスニアからの共和国独立が承認され、最終的にセルビアと合併することを望んでいる。

 アナリストは、ボスニアの人口380万人の31%を占めるセルビア人共和国で住民投票が実施された場合、セルビア系住民の圧倒的多数が、独立に賛成するとの見通しを示している。

 これに対し米国は、「ボスニア・ヘルツェゴビナは単一の主権国家」「すべての問題はデートン合意によって解決されている」との立場を示し、デートン合意の原則を根底から揺るがしかねない動きを批判している。(c)AFP/Tanja Ilic