【1月29日 AFP】ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領の一般教書演説が28日に行われるのを前に、民主主義国家リーダーの言葉を一言一句も聞き漏らすまいと待ちかまえる米国人たちがいる。
  
 やり手の政治評論家でも真実を求める市民でもなく、「一般教書演説ドリンクゲーム」を楽しむバーの客たちだ。

 ブッシュ政権下の6年前にプリンストン大学(Princeton University)の学生2人が考案したこの飲酒ゲームは、例えばブッシュ大統領が「わが国は強い(The state of our union is strong)」もしくは同様の意味の言葉を述べるたびにお酒やビールを一気飲みするといったゲームだ。

 もしもスピーチでブッシュ大統領が涙ぐんだら、さらにもう一杯一気飲みしなければならない。禁欲主義者のブッシュ大統領が、感情をあらわにすることは、まずないだろうが。
 
 また、「神」やこれに準じる言葉を述べた場合は、店内の客に2杯おごらなければならない。

 「軍隊」という言葉ならば酒を一口すするだけでいいが、もしブッシュ大統領が「水責め」に触れたならば大変だ。大きく背をそらせた状態で口に酒を注ぎ込み、うがいをしてみせなければならない。

 イランのマフムード・アフマディネジャド(Mahmoud Ahmadinejad)大統領の名前を口にした場合は、1杯。ただしブッシュ大統領が「アフマディネジャド」と正しく発音できたなら、さらにもう1杯を直ちにあおらなければならない。

 また、ブッシュ大統領がパレスチナのイスラム原理主義組織ハマス(Hamas)や「車両爆弾」に触れた場合には、アイルランドのギネス(Guinness)ビールかアイリッシュ・リキュールの「ベイリーズ(Baileys Irish Cream)」、もしくはアイリッシュウイスキー「ジェイムソン(Jameson)」をバーテンダーにおごる。ブッシュ大統領が、「ハマス」を「ハムス」と発音したならば2杯だ。

 ゲームの参加者はゲーム中の自身の行為も記憶している必要がある。例えば、先に「中東和平」に関する言葉で一気飲みをしたならば、以後、「キャンプ・デービッド(Camp David)」、「ロードマップ」などブッシュ大統領が中東和平関連の単語を述べる度に、同じ種類の酒を飲まなければならない。

 ゲームのルールは演説の内容だけでなく映像にも適用される。

 ナンシー・ペロシ(Nancy Pelosi)下院議長のアップが映し出されたら、顔の筋肉を一切動かさずに一気飲みをする。

■ルールを紹介するサイトにアクセス殺到

 「一般教書演説ドリンクゲーム」は弁護士のマーク・メルツァー(Marc Melzer)さんと企業で営業部長を務めるハワード・ドイチ(Howard Deutsch)さんがプリンストン大学生時代の2002年に考案した。

 当初、思いつきで始まったゲームをおもしろ半分でウェブサイトで紹介したところ、全米各地から大反響があり、確立したルールが欲しいとの要望に従い現在に至っている。

 26日以来、2人が立ち上げたウェブサイト「drinkinggame.us」には3万件のアクセスがあったという。AFPがログインしてからの1時間だけでも、アクセス件数は5000件に上った。

 メルツァーさんは、類似したドリンクゲームは他にもあるかもしれないが、米国人のほとんどは自身らが考案したルールでゲームを楽しんでいるのではと推察する。

 しかし、2人は今では政治に真面目に関心を持っており、大統領の一般教書演説には酒を飲まずに耳を傾け、演説の切れ目に酒をすする程度だけだという。

 似たような飲酒ゲームは他の国でもみられる。

 英国では、エリザベス女王(Queen Elizabeth II)が演説のなかで「夫とわたしは(my husband and I)」と述べるたびにジントニックを一気飲みするゲームがある。

 一方、欧州では「ユーロビジョン・ソング・コンテスト(Eurovision Song Contest)」で、歌詞のなかに「愛(love)」や「光(light)」、「アバニビ」など意味不明な言葉、ロンドン地下鉄の駅名が出てくる度に、酒を一気飲みする

 ドイチさんは、次期大統領が誰になるかは知らないが、今日の一般教書演説が「ニュークリアー(核)」を「ヌクラー」と発音するブッシュ大統領が拍手喝采を浴びる最後の晴れ舞台になるのは間違いないと語る。

 「一般教書演説ドリンクゲーム」には罰則はない。しかし参加者には、翌日、二日酔いという罰ゲームが待ち受けている。(c)AFP

【関連情報】「一般教書演説ドリンクゲーム」のウェブサイト