【1月17日 AFP】韓国の李明博(イ・ミョンバク、Lee Myung-Bak)次期大統領は17日、ソウル(Seoul)市内で当選後初めて外国報道陣を前に会見し、対日関係について「成熟した関係」を求めると述べ、日本による過去の植民地支配への謝罪は求めない考えを明らかにした。

■「謝罪求めない」

 2月25日に就任を控えた李氏は、「韓日関係は未来志向で発展すべきだ。それにより両国にとってプラスになるとともに、北東アジア全体の平和と繁栄にも寄与する」と述べた後、質疑応答で「個人的には過去に関して日本にいかなる形でも謝罪や反省を求めるつもりはない」と韓国政府としての姿勢転換を示唆した。

 盧武鉉(ノ・ムヒョン、Roh Moo-Hyun)現大統領を含め、これまでの韓国大統領は、日本政府に対し植民支配時代の残虐行為に関する謝罪を要求してきた。

 これについて李氏は「日本の謝罪が形式的だったのは事実だ。このために韓国民の心が動かされることはなく、問題が繰り返されてきた」と語り、「しかしわたしは成熟した韓日関係のため(日本に)『謝罪しろ』とか『反省しろ』とは言いたくない」と述べた。

■北朝鮮の非核化と引き替えに支援

 一方、北朝鮮政策について、李氏は、飛躍的な生活水準の向上を支援することを条件に、核兵器開発計画を放棄するよう強く説得を試みたいと明言した。北朝鮮との対話、交流を促進するために「最大の努力を払う」とし「われわれは北朝鮮に対し、核開発計画の放棄は金正日(キム・ジョンイル、Kim Jong-Il)政権および北朝鮮国民双方の利益となると説得を続ける」との意欲を示した。

 さらに、李氏は、完全な非核化と引き替えに10年以内に北朝鮮の国民所得を1人当たり3000ドル(約33万円)まで引き上げることを保証すると強調した。米国務省は、2004年の北朝鮮の国民総所得は1人当たり914ドル(約9万8000円)と推算している。

 また「韓国国民50万人および北朝鮮国民20万人全員が、核の脅威の下で生きるよりも、核兵器を放棄し、より人間的でより良い生活を送りたいと願っている」と述べた。

■「実利的な経済外交」、中国との連携強化を強調

 このほか、李氏は日米との関係をさらに向上させる一方で、中国との経済関係の重要性も強調した。「われわれの最も重要な経済パートナーである中国との関係をレベルアップさせる方針だという点を強調したい」

 中国は韓国の最大の貿易相手国で、両国の2国間貿易額は年間1300億ドル(約14兆円))を超えている。昨年は国交正常化15周年も迎えた。

 李氏が率いるハンナラ党(Grand National PartyGNP)の朴槿恵(パク・クンヘ、Park Geun Hye)前党代表は現在、李氏の特使として北京を訪問している。17日に胡錦濤(Hu Jintao)国家主席と会見し、李氏からのメッセージを伝えるとされている。

 韓国初の財界出身大統領となる李氏は「実利的な経済外交」を行うと明言してきた。米国および欧州連合(EU)との自由貿易協定も早急に締結したいとの意向を明らかにしているほか、その他の諸国とも同様の協定を模索したいとしている。

■欧米関係も経済を軸に

 昨年妥結した韓米自由貿易協定(FTA)は両国議会での批准を待つのみとなっているほか、EUとの交渉の新ラウンドが今月末に開始する。

 韓国経済の復活を公約に大統領選で歴史的大勝を果たした李氏は、韓国を海外投資家にとってより魅力的な投資先とし全面的な規制緩和を実施すると確約。さらに、しばしば激しい混乱をみせる同国の労使対立の改善にも取り組みたいとの意欲を示した。

 韓国内に2万8000人を駐留させる米国との関係については、韓国内の安全保障および北東アジア地域の安定強化をめざし、数十年におよぶ韓米同盟関係をより創造的に改革することになるだろうと述べた。(c)AFP