【1月11日 AFP】台湾で12日、3月の台湾総統選挙の前哨戦となる立法院(国会の相当、定数113)選挙が行われる。前年12月の世論調査では対中国協調路線の野党・国民党(KuomintangKMT)が与党・民主進歩党(民進党、Democratic Progressive PartyDDP)をリードしており、過半数の議席を獲得する見通しだ。

 そんな中、景気回復と政治不正撤廃を訴えて再選を目指す国民党の蒋孝厳(John Chiang)元外相に対し、民進党は政策ではなく、祖父が蒋介石・元国民党総裁だという点を攻撃している。

 ほとんどの選挙区では台中関係などが争点となっているが、蒋議員の選挙区では歴史は決して「過去の問題」ではない。

■台湾を守った英雄か、血にまみれた独裁者か-割れる蒋介石の評価

 1949年に毛沢東(Mao Zedong)の中国共産党との内戦に敗れ台湾に逃れた蒋介石については、評価が大きく割れており、台湾の経済的繁栄の基礎を築き中国の侵攻から守った英雄との見方もあれば、血にまみれた独裁者と見る人もいる。

 民進党と陳水扁(Chen Shui-bian)総統は、蒋介石には台湾総統在任中の1947年2月28日、大規模暴動の際に軍が地元住民数千人を殺害した事件の責任があると指摘、「独裁者」と非難している。

■台湾で進む脱「蒋介石」の動き

 陳政権は前年5月、蒋介石を記念し巨大な像を飾った「中正記念堂」(中正は蒋介石の名の一つ)を「台湾民主記念館」と改名。8月には元総統を記念した2つの祝日を取り消したうえ、南部高尾(Kaohsiung)にあった元総統の像を取り壊した。

 さらに12月には蒋介石、蒋経国(Chiang Ching-kuo)親子の遺体が仮安置され一般公開されていた施設を、財政難と人手不足を理由に閉鎖した。

 台北(Taipei)郊外にある国際空港の名も、2006年に中正国際空港から台湾桃園国際空港(台北国際空港)に変更されている。

■「蒋介石の孫」の立場は選挙戦にどう働くか

 蒋孝厳・元外相は蒋経国氏の非嫡子として生まれ、母親は後に不可解な死をとげた。これまで母方の姓「章」を名乗っていたが、数年前に改姓している。

 陳総統は前月、「蒋孝厳氏は議員として2つのことしか成し遂げていない。1つは改姓したことで、もう1つは蒋元総統の遺体を軍墓地に移すことを拒否したことだ」とやゆした。

 しかし蒋議員が自身の家系を誇りに思っていることは間違いなく、同議員の選挙事務所には父と祖父のモノクロの写真が高々と掲げられている。

 蒋議員は再選については不透明だと認めるものの、選挙戦の攻撃材料に祖父・蒋介石を利用する民進党の手法について、「逆効果にしかならない。民進党のチャンスをつぶすだけでなく、野党支持者の結束を強めるだけだ」と述べ、民進党は後悔するだろうと警告している。(c)AFP/Amber Wang