【1月9日 AFP】米大統領選の候補者争いでは遅れをとりながら8日に実施されたニューハンプシャー(New Hampshire)州の予備選挙で勝利した共和党候補のジョン・マケイン(John McCain)上院議員は、「生還」にかけては政界入りのかなり前からの実績がある。

■ベトナム戦争生還から政界の有力者へ

 マケイン氏はベトナム戦争従軍中の1967年、北ベトナム上空を飛行中に撃墜され、5年以上を捕虜収容所で過ごした。うち2年間は悪名高い捕虜施設「ハノイ・ヒルトン」の独房で過ごした経験を持つ。

 同氏は今や米政界の有力者の1人で、11月の大統領選挙の本選で民主党候補に勝利できるのはマケイン氏だけだとの世論調査結果も出ている。

 米各メディア報道によると、ニューハンプシャー州で実施された予備選の開票率は現在13%。マケイン氏の得票率は37%で、ミット・ロムニー(Mitt Romney)前マサチューセッツ(Massachusetts)州知事の29%を大きく上回っている。

 マケイン氏の選挙参謀を務めるマーク・マッキノン(Mark McKinnon)氏は米FOXテレビとのインタビューで、このように早い段階で、しかも大差での勝利は予測していなかったとし、「誰もが生還は無理だと言っていたが、マケイン氏は真の勇気を持って死からの生還を遂げた」と語った。

 マケイン氏本人は過去の苦い経験から、先の長い選挙戦で勝負はまだ決まっていないことを熟知している。

 同氏は2000年の大統領選挙でもマサチューセッツ州で勝利し有力候補に躍り出たが、次のサウスカロライナ(South Carolina)州でジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)現大統領に敗北し、選挙戦から離脱している。

 マケイン氏が直面する最大の難問は、おそらく彼の年齢だろう。本選で当選した場合、2009年1月の就任時の年齢は72歳と史上最高齢の米大統領になる。

■軍人一家に育った経験

 マケイン氏は1936年8月29日、当時米国が管理していたパナマ運河地帯(Panama Canal Zone)で軍人の家族に生まれた。その後は、米軍の慣例として各地を転々とするなかで育った。

 祖父も父も海軍将校だったため、マケイン氏が17歳で海軍士官学校に入学したのは自然の成り行きだった。

■戦争体験で培われた信念で独自路線をまい進

 捕虜時代に受けた拷問による負傷で腕を上げることができず、髪の毛をとかすこともままならないというマケイン氏は、こうした厳しい戦争体験を乗り越えて確立された揺るぎない信念で独自路線を貫く。一方で怒りっぽい一面もあり、時々ふいに口をついて出た失言が物議を醸したこともある。

 長期にわたってブッシュ大統領を支持してきたマケイン氏だが、ブッシュ政権の対イラク政策に対して共和党内では早い時期に異論を唱えた人物の1人でもある。同氏は、2003年のイラク侵攻時に投入した米軍の規模は不十分だったと主張した。その一方でマケイン氏は、イラク戦争反対派が米世論の多数を占めるなかで、早い段階でイラク増派を求めた人物の1人でもあった。

 共和党員ながらマケイン氏は移民法改正には賛成の立場だ。また、長年にわたって経済改革の必要性を訴え、地球温暖化問題についても積極的に発言している。さらに、自身の捕虜体験から「テロとの戦争」容疑者に対する拷問には強く反対している。

 しかし、その他の多くの問題については筋金入りの保守派で、妊娠中絶、同性愛者間の結婚、銃規制の強化などには反対姿勢を貫く。(c)AFP