【1月4日 AFP】2008年米大統領選挙の予備選幕開けとなった米アイオワ(Iowa)州の民主党党員集会で3日、バラク・オバマ(Barack Obama)上院議員(46)が勝利し、民主党の候補者指名に向け大きく勢いを増した。

 4年前にはほとんど無名だったオバマ氏だが、今後の選挙戦を左右するアイオワ州でライバルのヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)上院議員に勝利し、民主党候補者争いのトップに躍り出た。

■初の黒人大統領に向け前進

 ケニア人を父に、カンザス(Kansas)州出身の白人米国人を母に持つ同氏が大統領選で当選すれば、米史上初の黒人大統領が誕生する。

 新人上院議員のオバマ氏が「希望と政治改革」を訴えることで、メッセージに真実味が加わったことが勝利の一因とみられる。

■感動的な演説には定評

 オバマ氏の演説は常に聴衆を感動させることで定評がある。同氏がこれだけ早く有力候補になれたのは見事な演説技法に加え、カリスマ性、そして輝くばかりの笑顔を身に着けているからだ。これらを武器に同氏は、腐敗した今の政治を苦々しく思う若い支持者を大勢引きつけた。

 オバマ氏を一躍有名にしたのは、2004年の全国党大会で行った演説だ。「(米国には)黒人も白人もラティーノもアジア人もない。われわれは皆、星条旗と米国に忠誠を誓った一つの米国民だ」と訴えたオバマ氏の演説は多くの聴衆の胸をうった。

■若さゆえの賛否両論

 若さが話題にされることの多いオバマ氏は、しばしば米公民権運動の指導者、故マーティン・ルーサー・キング(Martin Luther King)牧師や故ジョン・F・ケネディ(John F. Kennedy)大統領、その弟の故ロバート・F・ケネディ(Robert F. Kennedy)氏らと比較される。オバマ氏もこうした比較を武器に希望と変化の必要性を訴え、ライバルのクリントン上院議員を腐敗した政治制度の象徴にたとえる戦略をとってきた。

 その一方で、政治経験の浅いオバマ氏の大統領選立候補は時期尚早だとの声も一部にある。これについてはオバマ氏もほぼその主張を認めているが、最新著書「The Audacity of Hope(勇敢なる希望)」のなかで、期が熟すのを待たずにいま立候補した理由について、政治改革を通じて市民運動を促進したいとの望みを実現するために、キング牧師が語った「今しかないという強烈な切迫感(fierce urgency of now)」に駆り立てられたと説明している。

■従来の黒人大統領候補とは一線

 これまでにも、新世代の代弁者と自称しながら白人からの支持を取り付けることに失敗して落選したジェシー・ジャクソン(Jesse Jackson)牧師や公民権運動指導者のアル・シャープトン(Al Sharpton)牧師など、黒人が大統領選挙に立候補した例はあるが、これほど高い当選の可能性を秘めた候補はオバマ氏が初といえる。オバマ氏自身も、過去の黒人大統領候補者からは一線を画した選挙戦を展開する戦略のようだ。(c)AFP/Stephen Collinson