【12月24日 AFP】国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)やアフガニスタンの旧支配勢力タリバン(Taliban)などテロ対策支援のために米政府がパキスタン政府に行っていた資金援助のうち50億ドル(約5700億円)以上が、別の目的に転用されていることが分かった。米ニューヨークタイムズ(New York Times)紙が24日に報じた。

 政府や軍の高官が同紙に語ったところによると、紛争が続く国境付近の部族地域にパキスタン兵10万人の駐留を維持することを目的とした米政府の援助金は、前線部隊には渡らず、対インドの兵器システムや燃料、武器などの膨れ上がった経費の返済に充てられたという。

 ペルベズ・ムシャラフ(Pervez Musharraf)大統領に批判的なパキスタン人によると、大統領は政権維持のために支援金を返済に充てたという。欧州外交関係者は、米政府は支援金の用途にもう少し注意する必要があったと指摘した。

 同地帯を視察した米高官は、米国の莫大な支援金にもかかわらず、「雪の中をサンダルを履いて立っている」前線部隊を目撃したと話した。また、兵士のなかには世界1次大戦時代のピス・ヘルメットと古いカラシニコフ銃、銃弾はわずか10連射分しか与えられていなかったものもいたという。

 両政府高官によると、両政府は支援金の用途や成果の評価方法などについて明確な戦略目標を設定していなかったという。

 米国はテロ対策支援の50億ドルとは別に、パキスタン軍の装備拡充や訓練のため毎年3億ドル(約340億円)を提供している。

 米議会は20日、この3億ドルの軍事援助に制限を課し、支援金のうち5000万ドル(約57億円)の支給はパキスタン政府が民主的権利を回復するまで延期することを決めた。(c)AFP