ベネズエラ 国民投票で敗北したチャベス政権の今後は
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【12月4日 AFP】ベネズエラで2日に実施された憲法改正案の是非を問う国民投票は、反対51%、賛成49%で否決され、大統領権限の大幅強化やベネズエラの社会主義国家化を狙ったウゴ・チャベス(Hugo Chavez)大統領(53)の思惑に待ったをかける形となった。
ベネズエラ中央大学(Central University of Venezuela)のTulio Hernandez教授は、選挙結果は「貧困層がチャベス大統領の行き過ぎた改革や権力集中に懸念を感じ始めた結果」で、ひとまず『チャベス神話』は弱まるだろうと分析する。「チャベス大統領がコロンビアの武装勢力に働きかけ、拘束されているイングリッド・ベタンクール(Ingrid Betancourt)元大統領候補を解放させるといった劇的な展開でもない限り、人気の浮揚は望めないだろう」(Hernandez教授)
9年近くにおよぶ政治家経験のなかで、チャベス大統領が選挙で敗北したのは初めて。キューバのフィデル・カストロ(Fidel Castro)国家評議会議長に匹敵する無敵の為政者イメージを目指してきた同大統領にとっては屈辱的ともいえる結果だ。
「キューバ社会主義革命の継承者を自負するチャベス氏にとって、今回の選挙結果は痛手」と、首都カラカス(Caracas)の「外交戦略分析センター」(Center for Diplomatic and Strategic Analysis)のEdmondo Gonzalez Urrutia氏はみる。
同氏は、チャベス大統領がイベロ・アメリカ首脳会議でスペインのフアン・カルロス1世(Juan Carlos I)を激怒させ「黙れ」と言われたり、コロンビア政府によってコロンビア武装勢力との仲介役から外されたりした外交上の失敗のつけが国民投票結果に現れたと分析する。一方で、Urrutia氏は、スペインやコロンビアから距離を置き、欧米と対立するイランに接近するチャベス大統領の外交姿勢は、ベネズエラを国際社会から孤立させるだけだとの懸念も示した。
また、反政府系のナシオナル(El Nacional)紙の論説委員Fausto Maso氏は、国民投票での敗北はチャベス政権の正当性のみならず同大統領の強みであるカリスマ性にも大きな打撃を与えたと論じた。
一方、ベネズエラの2700万の人口の半数以上を占める貧困層の間では、国民投票では「ノー」を突きつけたものの、依然としてチャベス大統領への支持は高い。石油産業の国有化や貧困地域における電力供給、健康センター設立、教育政策などが支持されたためだ。同大統領の任期が切れる2013年まで、こうした幅広い貧困層の人々がチャベス政権を穏やかに支持していくとみられる。
しかし、Hernandez教授は、貧困層の人々は「社会主義」を望んでいるわけではなく、まともな家屋と日々の食糧を求めているにすぎないと分析する。
一方で、国有企業の民営化を妨げ、中央銀行に過剰に干渉したチャベス大統領の政策に煮え湯を飲まされてきた産業界は国民投票結果に勢いづいており、今後、チャベス大統領はこうした反対勢力とも対峙していかなければならない。
民間経済調査会社「MetroEconomica」のエコノミスト、Pedro Palma氏は、「中南米のインフレの一因は非生産的な社会保障に予算を費やしてきたことにあることは明らかだ」と指摘する。
チャベス大統領が、失敗に終わった2002年のクーデターを支持したベネズエラ最古の民放テレビネットワークRCTV(Radio Caracas Television)の放送免許更新を許可しなかったことも反発を招く要因となっている。
このほか、調査会社DatanalisisのLuis Vicente Leon氏は、憲法改正案の否決には学生が大きな役割を果たしたと指摘。今後は、こうした学生が新たな反体制勢力として成長していく可能性を示唆した。(c)AFP/Philippe Zygel
ベネズエラ中央大学(Central University of Venezuela)のTulio Hernandez教授は、選挙結果は「貧困層がチャベス大統領の行き過ぎた改革や権力集中に懸念を感じ始めた結果」で、ひとまず『チャベス神話』は弱まるだろうと分析する。「チャベス大統領がコロンビアの武装勢力に働きかけ、拘束されているイングリッド・ベタンクール(Ingrid Betancourt)元大統領候補を解放させるといった劇的な展開でもない限り、人気の浮揚は望めないだろう」(Hernandez教授)
9年近くにおよぶ政治家経験のなかで、チャベス大統領が選挙で敗北したのは初めて。キューバのフィデル・カストロ(Fidel Castro)国家評議会議長に匹敵する無敵の為政者イメージを目指してきた同大統領にとっては屈辱的ともいえる結果だ。
「キューバ社会主義革命の継承者を自負するチャベス氏にとって、今回の選挙結果は痛手」と、首都カラカス(Caracas)の「外交戦略分析センター」(Center for Diplomatic and Strategic Analysis)のEdmondo Gonzalez Urrutia氏はみる。
同氏は、チャベス大統領がイベロ・アメリカ首脳会議でスペインのフアン・カルロス1世(Juan Carlos I)を激怒させ「黙れ」と言われたり、コロンビア政府によってコロンビア武装勢力との仲介役から外されたりした外交上の失敗のつけが国民投票結果に現れたと分析する。一方で、Urrutia氏は、スペインやコロンビアから距離を置き、欧米と対立するイランに接近するチャベス大統領の外交姿勢は、ベネズエラを国際社会から孤立させるだけだとの懸念も示した。
また、反政府系のナシオナル(El Nacional)紙の論説委員Fausto Maso氏は、国民投票での敗北はチャベス政権の正当性のみならず同大統領の強みであるカリスマ性にも大きな打撃を与えたと論じた。
一方、ベネズエラの2700万の人口の半数以上を占める貧困層の間では、国民投票では「ノー」を突きつけたものの、依然としてチャベス大統領への支持は高い。石油産業の国有化や貧困地域における電力供給、健康センター設立、教育政策などが支持されたためだ。同大統領の任期が切れる2013年まで、こうした幅広い貧困層の人々がチャベス政権を穏やかに支持していくとみられる。
しかし、Hernandez教授は、貧困層の人々は「社会主義」を望んでいるわけではなく、まともな家屋と日々の食糧を求めているにすぎないと分析する。
一方で、国有企業の民営化を妨げ、中央銀行に過剰に干渉したチャベス大統領の政策に煮え湯を飲まされてきた産業界は国民投票結果に勢いづいており、今後、チャベス大統領はこうした反対勢力とも対峙していかなければならない。
民間経済調査会社「MetroEconomica」のエコノミスト、Pedro Palma氏は、「中南米のインフレの一因は非生産的な社会保障に予算を費やしてきたことにあることは明らかだ」と指摘する。
チャベス大統領が、失敗に終わった2002年のクーデターを支持したベネズエラ最古の民放テレビネットワークRCTV(Radio Caracas Television)の放送免許更新を許可しなかったことも反発を招く要因となっている。
このほか、調査会社DatanalisisのLuis Vicente Leon氏は、憲法改正案の否決には学生が大きな役割を果たしたと指摘。今後は、こうした学生が新たな反体制勢力として成長していく可能性を示唆した。(c)AFP/Philippe Zygel