【12月2日 AFP】潤沢な資金を持つヘッジファンドは、投資戦略を外部に漏らすことはない。その一方で、ヘッジファンドが混戦模様の米大統領選に巨額の政治資金を「投資」していることが明らかになってきた。

 ヘッジファンドによる政治献金は、取引による利益増大に従い、近年急増している。同業界はまた今年米上院に対し、ファンド・マネージャーが稼ぎ出す、しばしば数百万ドルにも上るとされる収入への増税を見送るよう強いロビー活動を行ってきた。

 これまでのところ、共和党大統領候補者に比べ民主党候補がヘッジファンドからの資金集めに成功しているようだ。

 政治献金の監視団体Center for Responsive Politics(CRP)によると、ヘッジファンドから最多の献金を受けた大統領候補は民主党のクリストファー・ドッド(Christopher Dodd)上院議員(コネティカット州選出)で、今年9月までに71万4500ドル(約7900万円)の献金を受けた。

 共和党のルドルフ・ジュリアーニ(Rudolph Giuliani)候補が56万5000ドル(約6300万円)を集め2位につけ、以下民主党のバラク・オバマ(Barack Obama)候補、ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)候補、ジョン・エドワーズ(John Edwards)候補が続いているという。

 CRPで広報担当を務めるMassie Ritsch氏は、「ヘッジファンドは米中央政界に関係を築くことを望んでいる。選挙資金の献金は有効な手段」と話す。

 同氏は、ドッド上院議員が、上院銀行委員会(Senate Banking Committee)の議長を務め、ヘッジファンド業界に対する監督を担当していることと、ジュリアーニ氏が多くのヘッジファンドの拠点であるューヨークの前市長であり、今でも同市に影響力を持つ点を指摘する。

 ヘッジファンドへの投資は、かつて大規模投資家に限られていたが、今やヘッジファンドを運用先に選ぶのは年金基金や大学基金も含まれる。ヘッジファンドは多くの場合、高リスクの投資戦略を用い高リターンを求める特徴を持つ。

 大型ヘッジファンド・アマランス(Amaranth)が2006年に60億ドル(約6700億円)に上る損失を被ったことに加え、インサイダー取引が数度にわたり注目を集めてきたことで、投資家保護への不安は一段と増している。

 数兆ドル規模まで拡大したヘッジファンド業界は、ワシントンD.C.(Washington D.C.)に業界団体マネージド・ファンド協会(Managed Funds Association)を持つ。同協会は政治活動委員会の運営に潤沢な資金を供給し、ロビー活動の効果を高めているという。(c)AFP/Justin Cole