【11月29日 AFP】米CNNは28日、同ニュースのスペイン語放送で、ベネズエラのウゴ・チャベス(Hugo Chavez)大統領の映像が誤って、同大統領の暗殺を奨励すると受け取られかねない見出しと共に放送されたことについて、公式に謝罪した。

 反米強硬派として知られるチャベス大統領は、CNNの放送ミスは「政治的陰謀にもとづき意図的に行われたものだ」として、怒りをあらわにしている。

 問題となったのは、27日のCNNスペイン語放送中に流れたチャベス大統領とコロンビアのアルバロ・ウリベ・ベレス(Alvaro Uribe Velez)大統領の映像で、「彼を殺したのは誰か」という見出しが付いていた。

 CNNスペイン語放送のChristopher Crommett副社長の説明によると、問題の見出しは、その前に放送していたNFLのショーン・テイラー(Sean Taylor)選手射殺事件のニュースで流れる予定だったが、誤ってその後に放送したチャベス大統領の映像にかぶせてしまったという。

 Crommett副社長は、テロップは「単純な放送事故だった」としたうえで、「CNNスペイン語放送は、誤りを遺憾に思う」と正式に謝罪を表明した。

 しかし、自身に関するニュースが敵対的な報道に偏っているとして、これまでもCNNの姿勢を糾弾してきたチャベス大統領の怒りは収まらない。見出しは作為的なものだったと信じて疑わない大統領は、ベネズエラの国民投票を目前にした「心理戦争の一部だ」と対決姿勢を隠さない。

 また、ベネズエラ大統領府の声明によると、チャベス大統領はベネズエラ検察当局に、CNNの見出し放送ミスに関する捜査命令を出すことも検討中だという。

 チャベス大統領の反応の裏には、改憲の是非を問う国民投票が12月2日に迫っているという事情もある。大統領の再選規制の撤廃を盛り込んだ憲法改正案が国民投票で承認されれば、チャベス大統領の無期限再選が可能となる。このほか、社会主義国家改革案として、非常事態下でのメディア検閲も可能とする内容となっている。

 ベネズエラ国内では国民投票に反対する世論も高まる中、CNNの放送ミスは「政治的暗殺をあおるものだ」とチャベス氏は非難している。(c)AFP