【11月29日 AFP】北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル、Kim Jong-Il)総書記の側近で、対南外交を担当する金養建(キム・ヤンゴン、Kim Yang-Gon)労働党統一戦線部長(69)が29日、3日間の日程で韓国訪問を開始した。10月の南北首脳会談での合意履行について韓国側と協議する。

 金部長は実務レベルの高官5人とともに陸路、韓国入りした。同日中に韓国の李在禎(イ・ジェジョン、Lee Jae-Joung)統一相と会談するほか、30日には金万福(キム・マンボク、Kim Man-Bok)国家情報院長との会談を予定している。

 金部長は、金総書記が最も信頼を置いている側近の1人とされる人物で、10月に平壌(Pyongyang)で行われた金総書記と盧武鉉(ノ・ムヒョン、Roh Moo-Hyun)韓国大統領との首脳会談では、政府高官として唯一同席した。

 李統一相は28日、北朝鮮の代表団は韓国側の南北経済協力担当者と会談し、首脳会談での合意履行について意見交換すると述べた。

 今回の異例の訪問が実施された時期について韓国の野党陣営では、12月19日の同国次期大統領選挙に北朝鮮が影響を与えようとしているのではないかと憶測している。

 韓国の世論調査では、対北強硬路線を唱える保守系候補者が、政府寄りの候補者を大きく引き離している。一方、北朝鮮の国営メディアは、韓国の保守陣営に対し、激しい批判を展開している。

 韓国保守系の野党ハンナラ党(Grand National Party)は、首脳会談での合意事項に関する協議のためだけに金部長が訪韓する理由はないと主張している。同党広報担当のNa Kyung-Won氏は「大統領選が近づいており、何か思惑があるという疑いが浮上するのは当然だ」と述べ、北朝鮮側に対して大統領選に干渉しないようけん制した。
 
 北朝鮮代表団は、北朝鮮で事業展開中の韓国企業数社や、韓国南部の巨済島(コジェド、Geoje)にある大宇造船(Daewoo Shipbuilding)の造船所も訪れる。

 聯合(Yonhap)ニュースは政府高官の話として、代表団が12月1日夜に帰国する直前に、盧大統領を表敬訪問する方向で調整が進んでいると伝えた。(c)AFP