【11月28日 AFP】ナチス・ドイツの強制収容所で収容者の虐殺に関与し「死の医師(Dr Death)」として恐れられたAribert Heim容疑者(93)が、南米に潜伏しているとみられると、ユダヤ人権擁護団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター(Simon Wiesenthal Center)」が27日、明らかにした。

 ナチス戦犯の追及を続ける同センターのEfraim Zuroffイスラエル本部長は、アルゼンチンの首都ブエノスアイレス(Buenos Aires)で記者会見し、Heim容疑者がまだ生存しており、チリかアルゼンチンに潜んでいると確信するに至る複数の証拠があると語った。「確証はないが、捜索は続ける」

 Heim容疑者は、ナチス・ドイツ併合下のオーストリアに設立されたマウトハウゼン(Mauthausen)強制収容所で、収容者に薬物注射などを行い、数百人を死に至らしめた罪に問われている。数あるナチスの強制収容所のなかでも、マウトハウゼン収容所の状況は特に過酷を極めたとして悪名高い。

 同容疑者は1945年、敗戦直前に米軍に捕らえられ捕虜となったが、2年半後に解放されている。サイモン・ウィーゼンタール・センターによれば、Heim容疑者が解放された経緯については不審な点がかなり多いという。

 その後、ドイツで開業医として暮らしていたHeim容疑者だが、1962年、ドイツ、オーストリア両政府から戦犯として指名手配されたため逃亡。行方が分からなくなっている。

 サイモン・ウィーゼンタール・センターはドイツ、オーストリア両政府とともに、31万ユーロ(約5000万円)の懸賞金をかけてHeim容疑者の所在などに関する情報提供を募るなどして同容疑者の逮捕に向けた活動を続けてきた。(c)AFP