【10月31日 AFP】米中央情報局(Central Intelligence AgencyCIA)のマイケル・ヘイデン(Michael Hayden)長官は31日、米国シカゴ(Chicago)のシンクタンクでの講演で、米国によるテロ容疑者の国外送致を擁護した。米国は、尋問手法に関する法的規制のより少ない国外の秘密収容施設へテロ容疑者を送致しているが、野党や国際人権団体から批判があがっている。

 米シンクタンク「シカゴ地球問題評議会(Chicago Council on Global Affairs)」で講演したヘイデンCIA長官は、「われわれのプログラムは有益であると同時に正当だ。異論の多い措置であることはわたしも十分認めるが、そのような措置を取っている理由は唯一、代わる手段がないという、この情報活動の特殊性による」と述べた。 

 同長官によるとCIAでは2002年以降に拘束した「訓練されたテロリスト約100人」に対する尋問から、数千の機密報告書を作成した。ただし容疑者の「国外送致、拘置、尋問プログラムの規模は小さく、慎重に実行している」と言い、「特殊な尋問方法」が必要だった被拘束者は全体の三分の一に満たないと付け加えた。

 しかし、CIAの尋問プログラムは政府に対する強烈な批判を招いている。またジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)大統領が、米政府はあくまで拷問は行っていないと否定したものの、「強化尋問の手法」を除外することは拒否しているため、批判はいっそう高まっている。
 
 次期司法長官に指名されているムマイケル・ムケージー(Michael Mukasey)元連邦地裁判事は前日、強化尋問の手法例として「ウオーターボーディング(水責めの一種)」を挙げ、「不快で、一線を越える可能性がある」と懸念を表明したうえで、拷問としてこの手法を使用する可能性を明確に除外することは避けた。さらに機密扱いの手法についてあれこれ述べることはできないとした。ただし、民主党の中心的議員らからの高まる批判を受け、同党へ回答した書簡の中では「尋問手法に関する調査を行う」と公言した。

 ヘイデンCIA長官は講演の質疑応答で、2006年6月に自身が同職に就任して以来、尋問手法の明確化は最優先課題だと述べた。また「私の信念としても、またCIAもそうあってきたが、共和国(米国)を守るためにわれわれがしようとすることには、持続性がなければならない。それは、国家としてわれわれが持つ広範な価値観と一致していなければならなかったし、合法性という柱だけでも成り立ち得なかった。政策だけではなく政治的な永続性も必要だったのだ」と語った。

 CIAは尋問手法に関する法的限界をどこに引くべきかについて、議会、司法省の双方と激しい議論を行ってきた。またヘイデン長官によると、尋問の最中は常に一線を越えることのないよう、監視役の職員が同席しているという。「尋問を行う際は、被拘束者の身体的安全性と健康面に関する責任を課された職員がいる。彼らには行われていることを制止する権限がある」。

 しかし、「ウオーターボーディング」には拷問性はないのかと直接的な問いを投げかけると、ヘイデン長官は当惑した様子で、国内法と国際法を混同して引用し答えた。「ムケージー司法長官もわたしも、あなたの理論上の質問に回答することはできない。質問にわたしが答えるのだとしてもその前に、この質問がされた状況の全体性を理解する必要がある」と述べた。(c)AFP/Mira Oberman