【10月31日 AFP】英国を公式訪問中のアブドラ・ビン・アブドルアジズ(Abdullah bin Abdul-Aziz)サウジアラビア国王は30日、エリザベス女王(Queen Elizabeth II)による歓迎式典に出席した。その一方で、人権団体などからは同国王の訪英を批判する声もあがっている。
 
 歓迎式典はロンドン(London)中心部の近衛騎兵隊本部内の広場で行われ、サウジアラビアの伝統衣装に身を包んだアブドラ国王とエリザベス女王のほか、夫のフィリップ殿下(Prince Philip)、ゴードン・ブラウン(Gordon Brown)首相らが儀礼兵の閲兵式に臨んだ。

 一方で、訪英に先立ちアブドラ国王が、2005年7月に起きたロンドン同時テロで事前にサウジアラビアが提供した情報を活用しなかったとして、英国を非難する声明を発表していることなどから、一部の政治家や人権活動家、メディアなどから、同国王の訪英を疑問視する声も出ている。

 ケン・リビングストン(Ken Livingstone)ロンドン市長は、英政府がサウジアラビアとの同盟関係を重視するあまり、同国におもねりすぎだとして閣僚らを批判。

 このほか国際人権活動団体「アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)」がアブドラ国王の訪英にあわせて発表した報告書では、同国の公開処刑、むち打ち刑、拷問、女性差別などの人権侵害の実態を告発している。

 サウジアラビアは英国にとって中東最大の同盟国。外交面ではイラク、イラン両国対応やテロ対策における協力国であり、貿易面でも重要な原油供給国でもある。また、英国の対サウジ輸出額は44億ポンド(約1兆500億円)に達する。

 こうした両国の親密な関係から、英重大不正捜査局(Serious Fraud Office)が「国益重視の判断」から前年12月、サウジアラビアに対する43億ポンド(約1兆200億円)の武器取引疑惑の捜査を打ち切った経緯がある。

 アブドラ国王は31日にブラウン首相と会談した後、翌11月1日に英国をたちイタリア、ドイツ、トルコを歴訪する予定。(c)AFP/Katherine Haddon