【10月17日 AFP】イランを訪問中のウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)露大統領は16日、イランの核開発問題について、同国の核エネルギー保有権の支持を表明し、欧米諸国による同国への軍事行動をけん制した。

 プーチン大統領は、カスピ海(Caspian Sea)沿岸諸国首脳会議に出席するため、厳戒態勢が敷かれる中、テヘラン(Tehran)に到着。自爆テロ犯による同大統領暗殺計画が報じられたため、大統領の訪問日程は極秘にされていた。

 現在、核開発問題をめぐり欧米諸国との緊張が高まっているイランにとって、プーチン大統領の訪問は非常に重要な意味を持つ。プーチン大統領は、イランのマフムード・アフマディネジャド(Mahmoud Ahmadinejad)大統領との会談を終え、最高指導者アリ・ハメネイ(Ali Khamenei)師との会談も予定している。


■カスピ海沿岸諸国首脳、自国内で第三国の武力行使を認めず

 カスピ海沿岸諸国首脳会議には、ロシア、イラン、アゼルバイジャン、カザフスタン、トルクメニスタンの大統領が出席。プーチン大統領はほかの4か国の大統領に対し、「いかなる武力も行使しないことが重要だが、武力行使の可能性について考えないことも重要」と主張した。

 また、「他国に対し、ほかのカスピ海沿岸諸国に対する攻撃あるいは軍事行動のために、自国領土を利用させないよう協議することも重要」とし、5か国首脳は「カスピ海沿岸諸国のいずれかに対する軍事行動を目的とする第三国に自国領土の使用を許可しない」と宣言した。

 イランの北側に隣接するアゼルバイジャンは米国の同盟国であるが、米軍に対し自国領土内からの他国への攻撃を一切認めないと繰り返し主張している。米政府はイランの核エネルギー保有を核兵器開発のカムフラージュだとして非難し、同国への軍事行動の可能性を排除していない。

 さらに、「核拡散防止条約(Non-Proliferation TreatyNPT)および国際原子力機関(International Atomic Energy AgencyIAEA)の枠組みの中で、差別なく、平和目的で、原子力を研究、生産、使用できる」とする同条約加盟国の権利を支持し、イランの核エネルギー保有権の支持を宣言した。

 プーチン大統領は記者会見で、「カスピ海沿岸諸国の首脳は、原子力の平和利用は許可されるべきとの見解を表明した」と明らかにした。

 イラン南部ブシェール(Bushehr)にロシアが建設中のイラン初の原子力発電所についても言及し、「ロシアは平和利用を目的とするイランの原子力発電所建設に協力する唯一の国」とも主張した。同発電所は当初の建設計画より完成が大幅に遅れている。


■イラン核開発をめぐるロシアと欧米諸国の見解の違いが浮き彫りに

 プーチン大統領の発言は、イランの核開発をめぐるロシアと欧米諸国との見解の違いを浮き彫りにした。欧米諸国はイランの核開発問題をめぐり、同国政府に対し、国連(UN)による制裁を模索している。

 一方、ロシア側は、外交が問題解決への道と主張し、イランの核開発を軍事目的とする欧米諸国の主張を退けている。イラン政府もまた、同国の核開発が全面的に平和目的であることを主張している。(c)AFP/Aresu Eqbali