【10月15日 AFP】2008年の米国大統領選挙では、民主党のヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)候補が最有力視されているが、クリントン氏が当選した場合、米大統領の座は30年間近くにわたり、ブッシュ家とクリントン家による支配が続くことになる。この可能性が現実味を帯びるにつれ、大統領の世襲化に関する議論に火がついている。

■米大統領職を上流階層が独占?

 クリントン候補が勝利した場合、女性初の軍最高司令官が誕生するなど、米国史上記録的な事柄がいくつか生まれる。大統領職がごく少数の上流階層に固定される状況がさらに続くことになる。

 現職のジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)大統領の父、ジョージ・H・W・ブッシュ(George HW Bush)氏が大統領に就任したのが1989年。以降、クリントン候補の夫であるビル・クリントン(Bill Clinton)前大統領、現ブッシュ大統領と続き、89年以降に誕生したアメリカ人口3分の1に当たる1億人以上の国民が、ブッシュ家かクリントン家出身の大統領しか見たことがないという事態になる。

 ヒラリー大統領が誕生した場合、両一族の支配は実に24年間にわたり、ヒラリー候補が2期目も勝利すれば、この記録は28年に延びる。英国王室の支配に対する服従を振り捨てて誕生した米国では、誰の目から見てもこの事態は好ましくないといえる。

■知名度優位の選挙の弊害

 ダートマス大学(Dartmouth College)のリンダ・ファウラー(Linda Fowler)教授(政治学)は、近年の選挙運動は莫大な資金を必要とするため、知名度が高いほど有利になっていることの反映だと指摘する。

「資金集めのためには、初期の世論調査の段階で知名度が必要だ。有権者は、勝利を確信できる候補でないと寄付しない。勝利への信頼を得るためには、有権者にすでに知られている候補者を立てて支持を得るという戦術の悪循環に陥っている」と同教授。

 ニューヨーク・タイムズ(New York Times)紙のコラムニスト、モーリーン・ダウド(Maureen Dowd)氏は「身内のコネがなかったら、ヒラリー候補が出馬していたのは大学の学長選挙だったろう。ブッシュ大統領は今ごろ、テキサス(Texas)州で石油を掘っていて、公の場には姿がなかっただろう」と皮肉った。

■ヒラリー候補は「七光り」批判かわす

 ヒラリー候補自身は、前大統領の夫の「七光り」を借りた出馬ではないと強調している。有権者の間では、戦争続きの現政権と比べ、堅調な経済成長を遂げたクリントン時代の再来を願う声も多い。

 7月に行われた候補者討論会でヒラリー候補は、ブッシュ、クリントン一族がこれほど長期にわたって政権を握ることをどう考えるかとの質問を受け、「2000年にブッシュ大統領が選出されたのは問題だと思う」と答えて笑いを誘い、「ここにいる誰がなっても、現大統領よりは良い大統領になると思う」とかわした。(c)AFP/Marie Sanz