【10月13日 AFP】パキスタン最高裁は12日、亡命中のベナジル・ブット(Benazir Bhutto)元首相に恩赦を与える大統領令の合憲性をめぐる審理を開始した。最高裁の決定によってはブット元首相が汚職訴追を受ける可能性もあるため、ペルベズ・ムシャラフ(Pervez Musharraf)大統領にとって新たな試練となりそうだ。

 ムシャラフ大統領と最高裁とは、3月のイフティカル・ムハンマド・チョードリー(Iftikhar Muhammad Chaudhry)最高裁長官の職務停止処分問題をきっかけに対立を深めており、次週には先の大統領選の違憲審査も始まる。チョードリー長官は同日、恩赦を違憲とする5件の訴えについて審理を行うことに合意した。

 今回の大統領令は、1985年から1999年の間に汚職の罪で訴追されている政治家ら全員の訴追を撤回するもので、大統領と元首相の政権分担取引の決め手となったとされている。同長官は、「最高裁が大統領令を違憲と判断した場合、恩赦の対象となった政治家にはあらゆる訴追回避の権利も認められない」と述べた。次の審理は3週間後に開かれる。

 ブット元首相筋は同日、「ブット氏の帰国は最高裁の判断には左右されない」と述べ、滞在先のアラブ首長国連邦からロンドン(London)には戻ることはせず、直接ドバイ(Dubai)から予定通り10月18日に帰国することを明らかにした。元首相は1988-90年および1993-96年の2度の首相在任中、夫とともに15億ドル(約1800億円)を着服した罪で有罪判決を受けている。

 大統領に近いシェイク・ラシッド(Sheikh Rashid)鉄道相は、最高裁の決定が大統領と元首相との政治協定に影響する可能性があるとしている。

 また、大統領筋によると、最高裁でムシャラフ大統領の再選を覆す判断が下された場合、大統領は戒厳令を布告する可能性もあるとしている。(c)AFP/Nasir Jaffry