【10月13日 AFP】欧州連合(EU)は12日、EU加盟を目指すモンテネグロとの安定化連合協定(Stabilisation and Association AgreementSAA)締結について、ブルガリアが協定における欧州単一通貨ユーロ(euro)の表記に対する異議を取り下げない限り協定締結はありえないと表明した。

 輪番制で2007年後半の議長国を務めるポルトガル政府高官は、「ことは単純だ。今日問題を解決するか、あるいは協定を締結しないかだ」と語った。

 この高官は、15日、モンテネグロ首相をルクセンブルク(Luxembourg)に招請しておきながら予定されていた調印を行わないのは非礼だとの見解を示したうえで、「協定の調印どころかコーヒーに誘う以外に何もできない状況で、一国の首相を招待するなどということは私にはとてもできない」と語った。

■ブルガリアの主張

 ブルガリアは、キリル語訳された協定の中で、ユーロが「euro」と表記されていることに反発、「evro」(ローマ字への翻字。キリル文字表記は写真参照)とするべきだと主張している。ブルガリアはこの1月、ルーマニアとともにEUに加盟したばかり。ブルガリア語は23か国語あるEUの公用語の1つとなっている。

 あるブルガリア外交官は「通貨ユーロの表記についてわれわれは完全にEUと見解を異にしている。現状の表記はキリルの書き方でない」と指摘した上で、「わが国の外相は政府より、ユーロという単語がわれわれの流儀で綴られない限り調印するに及ばず、という訓令を受けている」と述べた。さらに「加盟条約では、ユーロのキリル風の表記を求めるわれわれの権利が認められている」と説明する。

■今後に影響も

 バルカン諸国がEUに加盟するにはSAAに調印しなければならない。今回の表記問題が解決しない場合、今後なんらかの条約が結ばれるたびに同じ問題が蒸し返される可能性もある。また、ブルガリアが単一通貨を導入する2009年には、現在はローマ字およびギリシア語のアルファベットで書かれている貨幣自体の表記も問題となりかねない。

 さらに、EUの新しい「改革条約」への影響も予想される。新条約は今年末までに各国首脳の調印が必要だが、EU新条約の起草者にとって、合意を得た文書を一字一句正確にそれぞれの言語に翻訳するという難関が待っている。

 オリ・レーン(Olli Rehn)EU拡大委員は広報官を通じ「ブルガリアが、国内的に重要なのかもしれないが、協定の本質に無関係の技術的な言語の問題でモンテネグロを人質にとるつもりでいることを遺憾に感じている。この妨害は、西バルカン諸国に安定をもたらそうとするEUの政策の信頼性をも脅かすものだ」と述べた。

■モンテネグロには問題なし

 モンテネグロについてポルトガル政府高官は「モンテネグロには過失はない。われわれはモンテネグロが成し遂げた進展を歓迎する。協定締結の時期が来たと考えている」とした。(c)AFP