【9月21日 AFP】(9月21日 写真追加)米ルイジアナ(Louisiana)州Jenaで20日、人種差別に対する大規模な抗議すデモが行われ、数千人が街を行進した。

 抗議デモの発端となったのは、Jenaの高校で起きた暴力事件で、白人学生1人に暴力を振るった黒人学生のグループに重刑が科された。同校ではこれ以前から人種問題に関する事件が相次いでおり、公民権運動の指導者らにとって、米国の刑事司法制度にまん延する不公平さを浮き彫りにするものとなった。

 人種間の緊張が最初に高まったのは、1人の黒人学生が人種を区別する目に見えない線を超えて、校庭の「白人専用」の木の下に座ろうとしたことだった。翌朝、その黒人学生は縄で縛られその木につるされた。

 この事件以降、学校の内外で暴力事件が何件も発生したが、当局者が「若者の悪ふざけ」として黒人学生を木につるした白人学生3人の退学を拒否すると、校舎に火がつけられるにまで至った。縄でしばり木につるすことは、米国南部では長い間、黒人に対する暴力のシンボルとされてきた。

 この一連の事件で、多くの場合、白人学生は刑事責任を逃れてきた。一方、2006年12月に校内で起きた暴力事件では黒人学生6人が殺人未遂で起訴され、それ以来、緊張は新たな高まりを見せている。

「Jenaの6人」と呼ばれるようになった黒人学生6人への殺人未遂容疑は最終的には引き下げられたが、6人は依然として過酷な罰に直面することになる。

 ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)大統領は同日、この一連の事件について、「ルイジアナでの出来事を遺憾に思う。感情は理解できる」と同情を示した上で、「司法省および連邦捜査局(FBI)が現地の状況を調査している。裁判の際は、アメリカ国民すべてが公正であってほしいと望んでいる」と述べた。また、共和党は人種問題では「実績がある」と強調した。

 一方、黒人である米民主党の次期大統領有力候補バラク・オバマ(Barack Obama)上院議員は声明で、今回の抗議デモを好機として変化を訴えかけ、「21世紀になっても校庭の木につるされ、若者が公正・平等に扱われないということは、もはやJenaの町の人々またはアフリカ系米国人に対する攻撃ではなく、米国民としてわたしたちが掲げている理想に対する攻撃だ」と主張した。(c)AFP