【9月16日 AFP】米国のジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)大統領は15日、イラク駐留米軍の撤退を急げば米国の安全が損なわれる恐れがあると警告した。

■イラク早期撤退は、過激派の勢力拡大の恐れ

 毎週恒例のラジオ演説の中で、ブッシュ大統領は「万一われわれがイラクから追い出されれば、すべての過激派勢力がつけあがる。アルカイダ(Al-Qaeda)は人員を補充し、新たに潜伏場所を見つけることが可能になるだろう」と語り、イラク国内の紛争を激化させているとして国際テロ組織アルカイダとイランを名指しした。

 ブッシュ大統領はさらに「それに反して、自由なイラクはアルカイダに安全な潜伏場所を与えない。自由なイラクはイランの破壊的な野心に立ち向かい、テロとの戦いにおけるパートナーになる」と述べた。

■ウェッブ上院議員案、米軍削減につながるか

 一方、全志願制をとる米軍の人員が度重なる海外派遣に伴い不足している現実を十分認識しているロバート・ゲーツ(Robert Gates)国防長官は14日、イラク駐留米軍部隊の規模を、次期大統領が就任する2009年1月までに、約10万人まで削減できるよう期待すると語っている。

 民主党上院議員らの提案内容が実現すれば、この数字はさらに速いペースで減少することになりそうだ。ベトナム戦争の退役軍人、民主党のジム・ウェッブ(Jim Webb)上院議員が「海外に派遣された米軍兵は、再度派遣されるまでの間に、直近の海外派遣期間と同じだけの期間を自宅で過ごさなければならない」ことを提案し、この内容について現在協議が行われているためだ。

 15日付ニューヨーク・タイムズ(New York Times)紙は、間もなくウェッブ議員の提案が承認されるのに必要なだけの共和党の支持が得られると報じている。

 同提案が承認されれば、米軍司令官らは、10日にイラク駐留米軍のデビッド・ペトレアス(David Petraeus)司令官が議会で述べたよりも速いペースでの撤退を余儀なくされるとみられる。

 ウェッブ議員の提案についてゲーツ国防長官は「善意」の提案だと評したが、現実化すれば、すでにイラクに展開している部隊の駐留期間延長や、州兵および予備役の追加召集が必要になる可能性があるとも語っている。

■共和党議員の支持が必要

 政治制度上、米国では、大統領が軍の最高司令官を務め、外交政策も決定するが、予算案の承認を行うのは議会の権限。議会は、予算案に条件をつけることもできる。

 上院では、民主党が過半数を占めているものの、共和党との差がわずかであるため、ウェッブ議員の提案が承認されるためには、共和党からの支持を獲得する必要がある。

 15日のラジオ演説で、ブッシュ大統領は、ペトレアス司令官とライアン・クロッカー(Ryan Crocker)駐イラク米大使がイラクの治安状況について「改善しつつあり、米軍部隊が敵から主導権を奪っている。増派の効果が表れている」と語ったことを明らかにした。

 同日ワシントンD.C.で開催されたイラク戦争に対する抗議集会の主催者「インターナショナルANSWER連合(Act Now to Stop War&End RacismANSWER)」のブライアン・ベッカー(Brian Becker)氏は「イラク国民の圧倒的多数は、米軍部隊や他の外国部隊の撤退を望んでいる。米国民の圧倒的多数は、戦争の終結と部隊の帰国を望んでいる」と語った。(c)AFP/Carlos Hamann