【8月30日 AFP】支持率低迷などから、亡命中のベナジル・ブット(Benazir Bhutto)元首相(54)との政権の連立運営を模索しているパキスタンのペルベズ・ムシャラフ(Pervez Musharraf)大統領は30日、陸軍参謀長を兼任するムシャラフ大統領にブット氏側が前提として求めている軍職からの辞任について、自身の意向の明言を避けている。

 前日には同大統領が軍職から辞任することで合意したとの報が流れていた。

 ブット氏側は週末までに、両者間の協定の条件にムシャラフ大統領が応じるかどうかを知りたいとしている。ムシャラフ大統領が率いる軍事政権は米国の「テロとの戦い」において主要な同盟相手としての役割を果たしてきたが、内外からの激しい批判も浴びている。

 ブット氏はムシャラフ大統領と政権を共同運営する条件として、9月または10月に実施される大統領選挙に同大統領が再選を目指して出馬する前に、兼務している軍職から退くことを求めている。ムシャラフ大統領は大統領に再選された場合、さらに5年間の任期を務めることになる。

 「政権の共同運営に関しては、大統領は法の原理に基づいた決断を下すだろう。今のところその決断はまだ出ていない」とパキスタンのムハンマド・アリ・ドゥラニ(Mohammad Ali Durrani)情報相は、首都イスラマバード(Islamabad)での大統領との会見後に述べた。ムシャラフ大統領の報道担当官であるRashid Qureshi元少将はAFPに対し、「対話は続いていて、最終決定はまだ下されていない」と述べている。

 最大野党であるパキスタン人民党(Pakistan People’s PartyPPP)議会派を率いるブット氏は、ほかにも強い条件として、大統領が議会解散権を放棄することをあげているという。

 Qureshi報道官はまた事前に、大統領は「いかなる圧力や最後通告にも動かされることはない」とし、即断を迫る要請をムシャラフ大統領が拒絶したことを明らかにしていた。

 ブット氏は最近の各メディアの取材に対し、政権の共同運営を目指すムシャラフ大統領との政治協定について、障害となる要素はほとんど片付けられたと述べていた。 

 英ガーディアン(Guardian)紙に対しては30日、ブット氏が首相在任中に、自身や夫のアシフ・アリ・ザルダリ(Asif Ali Zardari)氏、側近の議員らが行ったとされる汚職に対する訴追について、ムシャラフ大統領側が撤回することに合意したとも述べ、「進展は大きくあった。しかし発表をするのは、大統領だ」と語った。一方で、ムシャラフ大統領には31日中に返答を要請したとしている。

 ブット氏が亡命生活を余儀なくされたきっかけはこの汚職容疑だ。同氏は1988年から90年と、93年から96年の2度にわたり首相を務めている。ムシャラフ大統領との交渉の行方によっては、9月初旬にもパキスタンに帰国する可能性があるが、訴追撤回が保証されない限り依然、汚職の罪に問われる。(c)AFP/Danny Kemp