【8月23日 AFP】ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領が22日、自身のイラク政策を擁護するため、ベトナム戦争など過去の東アジアでの戦争と「テロとの戦い」を同一視する発言を行ったことに対し、米国内の有識者らから、歴史を誤認している恐れがあるとの批判が噴出している。

 ブッシュ大統領はミズーリ州(Missouri)カンザスシティー(Kansas City)で行った演説の中で、イラクのテロリストと北朝鮮やベトナムの共産主義者、戦時中の日本軍を比較。イラク駐留米軍が早期撤退すれば、ベトナム戦争後の東南アジアにおける大量殺りくのような混乱を招くことになると警告した。

 これに対し、アジア問題に詳しい米ワシントンD.C.の調査研究機関、ウッドロー・ウィルソン国際センター(Woodrow Wilson International Center for Scholars)のロバート・ハザウェイ(Robert Hathaway)氏は、ベトナムが1975年に陥落したのは南ベトナム政権が国民の支持を得られなかったからであり、米軍の撤退によるものではないと指摘。「ベトナムの民衆の多くは米軍を占領軍と見ていた。外国の軍事力では、南ベトナムの政局や、政府のために戦おうという政治的意思を支えるには不十分だった」と述べた。

 ベトナム戦争に従軍した退役軍人のジョン・ジョンズ(John Johns)元陸軍准将は、「ベトナム戦争から得た教訓は、米軍は他国の内乱に関与できないし、駐留が長引くほど事態は悪化するということだ」と話し、大統領はイラク駐留を継続するため歴史の都合のいいところだけを取っている、と批判。

 イラク、ベトナム両戦争を比較研究している歴史家のロバート・ダレク(Robert Dallek)氏も、イラクの惨事は「撤退することでもたらされるのではなく、進攻した結果起こったことだ」として、大統領は歴史を歪めていると非難した。(c)AFP/P. Parameswaran