【8月8日 AFP】7日に行われた米民主党の大統領候補者による討論会で、中国からの輸入食品の安全性への疑問から中国製玩具の回収問題、中国政府の通貨政策まで、中国に対する批判を候補者らが口々に展開した。

 「中国バッシング」は米労働総同盟産別会議(AFL-CIO)が主宰した討論会で、会場となったシカゴ(Chicago)のフットボール・スタジアムに集まった組合員1万5000人を前に集中的に展開した。民主党の支持基盤の一つである米労働界では、海外発注などによる国内労働者の仕事の減少や、自由貿易の悪影響が懸念されている。

■問題ある中国食品食べたくない、クリントン候補

 最有力候補のヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)上院議員はまず、中国政府が行っている「通貨操作」に米政府は対処しなければならないと発言。さらに多くの問題が見つかっている中国からの輸入品について触れ、「中国については輸入基準をもっと厳しくしなければならない。中国から来る問題のある食品を私は食べたくないし、有害なおもちゃで自分の子どもたちを遊ばせたくもない」と述べた。

■オバマ候補「中国は敵ではない」、リチャードソン候補は厳しく対応

 クリントン候補に続くバラク・オバマ(Barack Obama)上院議員は、中国を「競争相手」ではあるが必ずしも「敵」ではないと発言した。また「通貨操作をしているならば厳しく対応するまでだ」と述べた。

 外交活動経験の豊富なビル・リチャードソン(Bill Richardson)ニューメキシコ(New Mexico)州知事は「中国は戦略的競争相手。通貨をもてあそぶのを止めなければならないと、我々は中国に言う必要がある」と述べた。また、人権問題や貿易関連では中国により強硬な姿勢を取るべきだとし、「自国の労働者の権利にもっと繊細にならなければいけないとも言う必要がある。また、ダルフール(Darfur)での虐殺をやめるようスーダン政府に圧力をかけるなど、世界の人権問題にももっと取り組むべきだ」と語った。

■消費者製品安全委員会の改善訴える、エドワーズ候補

 前回の大統領選では副大統領候補だったジョン・エドワーズ(John Edwards)元上院議員も米玩具大手フィッシャー・プライス(Fisher-Price)の中国製玩具回収に触れ、「大多国籍企業のために働く消費者製品安全委員会(Consumer Product Safety Commission)ではなく、真に子どもたちの安全のために監視する委員会にするべきだ」と制度の改革を訴えた。

■ベテランのバイデン候補「中国に抵当権握られている」

 ベテラン上院議員のジョー・バイデン(Joe Biden)候補は、現ブッシュ政権が対中債務をイラク戦争の戦費に注ぎ込んでいると非難。「中国にいわばわが国の抵当権を握られている。対中債務高は1兆ドル(約120兆円)にも上る」と指摘した。

■クリントン候補に他候補者反論

 また労組メンバーを意識した発言としてオバマ候補とエドワーズ候補が、「クリントン候補は企業の利益に支配されている」とクリントン候補を攻撃、同候補は「過去15年間、右傾化した(企業)勢力には常に対抗してきたし、より強力に異議を主張してきた」と反論する一幕もあった。

 この討論会では、前週「パキスタンの国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)せん滅のために、武力攻撃を命じる用意がある」と述べて物議を醸したオバマ候補が、発言を「世間知らずな外交政策だ」と批判したクリントン候補らほかの候補に対し、再度反論した。

 最近の支持率調査では、クリントン候補が他候補に22ポイントの差を付けてトップを走っており、オバマ候補が後を追っている。民主党の指名争いの第1回投票は約5か月半後に控えている。(c)AFP