【8月8日 AFP】イラクのヌーリ・マリキ(Nuri al-Maliki)首相の連立政権が、相次ぐ閣僚の離脱で崩壊しつつある一方で、イラクの国民は、食料や水を求めて列を作り、停電した自宅や病院で暑さにあえいでいる。

 前年5月、議会選挙を経て、シーア派(Shiite)のマリキ首相率いる正統政府が発足。だがこれまでに閣僚17人が連立政権から離脱し、宗派抗争も収まる気配が見えないなど、脆弱な政権の根幹が揺らいでいる。マリキ首相は、発足時に国民和解を約束したものの、正統政府の存続すら危ぶまれている状況だ。

 シーア派政党は、前年末に処刑されたサダム・フセイン(Saddam Hussein)元大統領のもとで主導権を握っていた少数派スンニ派(Sunni)の首脳らが「反政府武装勢力を支援している」とみて不信感をつのらせている一方で、スンニ派の指導部は、シーア派政党はイランと癒着し、スンニ派市民への攻撃を繰り返しているシーア派武装勢力と共謀しているとして非難している。

 一方、市民は50度にも達する気温のなか、政府のいざこざよりもインフラの不備の方にいら立ちをつのらせている。

 バグダッド(Baghdad)の市民らは、扇風機も空調もないため暑い屋内を避けるため屋根で寝たり、断水のためボトル入りの水を買うか、稼働していない浄水場から引かれた汚ない水を飲むことを余儀なくされていると不満をもらす。

 失業率が50%を超える同国で、民間の請負業者に就職することができたある男性は、電気が供給されるのは1日数時間に限られており、それを補うため発電機を使用しようにも金が足りないと嘆く。「イラクには電気もきれいな水もなく、いい病院がないので、妊娠した妹をシリアの病院に送った。子供たちと年老いた母親は暑さに耐えられないと言っており、半日分の発電にはガソリンを70ドル(約8000円)分購入しなければならない」と語った。(c)AFP/Jennie Matthew