【7月29日 AFP】2001年9月11日の米同時多発テロ発生を受け、米政府が実施したデータベースの集中解析の合法性をめぐり、政権内で激しい論争が起きていたと28日のニューヨーク・タイムズ(New York Times)の電子版が報じた。

 同紙は政府でこの計画について知り得る立場にあった複数の人の話として、この問題が政権内部で激しい論争を引き起こした正確な理由は分からないとしている。しかし、問題になっているデータベースの集中解析はデータマイニングと呼ばれ、何百万人もの米国人の通話や電子メール記録などを対象としてコンピューターで集中検索を実施するもので、政府が実施すればプライバシー上の問題となりかねないものだ。

 米国家安全保障局(National Security AgencyNSA)が国際電話や電子メールの内容を一部傍受していたことはこれまでにも報じられていた。ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)大統領も、戦時下では合法だという理由で裁判所の令状なしの盗聴を許可したことを認めている。しかし、データマイニング計画が発覚したことで、政府による盗聴行為がこれまで考えられていたよりも広い範囲で行われていた可能性が出てきた。

 データマイニングに対する懸念は、2004年3月に政権内部で起きた論争と関係がある。この論争に関連し、病院に入院中だった当時のジョン・アシュクロフト(John Ashcroft)司法長官に対し、当時大統領顧問だったアルベルト・ゴンザレス(Alberto Gonzales)氏と首席補佐官だったアンドリュー・カード(Andrew Card)氏が、NSAの計画を承認するよう迫ったとされる。

 ゴンザレス司法長官は前週、上院で宣誓証言に立ち、2004年の論争はブッシュ大統領が承認したテロ監視プログラム(Terrorist Surveillance Program)には関係がなかったと証言した。ニューヨーク・タイムズは大統領が認めたのは令状なしの盗聴であって、データマイニングではないと報じ、政権内論争の焦点が盗聴ではなくデータマイニングにあったとすれば、ゴンザレス氏側は同氏の慎重に工夫された証言は法律論的ではあるが偽証ではないとの立場を維持できるだろうと述べた。

 しかし、同計画について説明を受けた上院情報特別委員会(Senate Intelligence Committee)の委員は盗聴とデータマイニングは密接に関係しており、1つの計画のもとで実施されたものだとの見方を強め、ゴンザレス氏の証言は議会を誤解に導きかねないもので、偽証の疑いもあると批判している。

 盗聴、データマイニングとも通常は裁判所の令状が必要だが、9月11日の同時多発テロ直後にブッシュ政権がテロ対策を強化する中、裁判所の許可なしに実施された。(c)AFP