【7月29日 AFP】(一部訂正)29日に投票が行われた参議院選挙で、安倍晋三(Shinzo Abe)首相率いる連立与党は大きく議席を減らし、参議院で過半数を割り込む見通しとなった。

 自民党が参議院で過半数割れするのは9年ぶり。1998年の選挙以来、同党は衆参両院で過半数を割ることはなかった。

 自民党の選挙対策委員会の谷津義男(Yoshio Yatsu)委員長は、安倍首相が今後の動きについて自民党議員と話し合うことを明らかにした。谷津氏は開票が終わるまで結果は分からないとしながらも、社会保険庁問題や政治とカネの問題で厳しい選挙戦を強いられたことを認めた。

 参院選敗北が安倍首相の退陣に直接つながるわけではない。衆院では与党連立政権は小泉純一郎(Junichiro Koizumi)前首相の遺産とでもいうべき過半数を大きく上回る議席を確保しているからだ。

 参院選で敗北した場合、首相は責任をとって辞任するのが通常だが、安倍首相の明らかな後任はおらず、側近も投票前には首相が退陣を考えていないことを強調していた。

 築地市場の近くに住む60歳の女性有権者は「自民党、安倍首相に『ノー』と言いました。安倍内閣には本当に怒っています。年金を任せることはできません」と語った。

 今回の参院選は、初の戦後生まれの首相である安倍氏にとって初の大規模な国政選挙だった。安倍首相は就任後すぐに憲法改正などに重点を置いた政策を展開したが、就任後10か月で支持率は急落。閣僚2人の辞職と1人の自殺を受け、首相の指導力不足を指摘する声が高まった。さらに、年金記録漏れ問題が浮上し、選挙の争点を年金問題にシフトすることを余儀なくされた。世界でも高齢化が急速に進む国である日本では、年金問題は特に有権者の関心が高い問題だ。

 東北大学の牧原出(Izuru Makihara)教授(政治学)は、安倍首相は歴史認識にかかわる問題を日常的な政策課題と同じように訴えようとしたことでつまずいたと指摘。それが「有権者に明確なメッセージを伝えることの失敗につながった」と分析した。

 一方で、安倍首相の不利な状況を利用し、古くからの自民党支持層の獲得を図った野党は大幅に議席を増やした。(c)AFP