【6月29日 AFP】トニー・ブレア(Tony Blair)前英首相が中東特使に任命されたことについてアラブ世界は28日、ブレア氏がイスラエル寄りだとして否定的な見方を示した。だが、穏健派の指導者らからは、パレスチナ問題の前進を期待する声もあがっている。

■専門家はブレア氏任命を疑問視

 アラブ諸国の評論家や専門家の間では、ブレア氏はジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領の追従者と見なされており、「パレスチナの困難な状況の緩和や、中東に平和をもたらす働きはできない」との見方が多数を占めている。

 アンマン(Amman)にあるAl-Quds Centre for Political Studiesの中東問題専門家、Oreib al-Rintawi氏は「ブレア氏はブッシュ大統領の親友で、首相在任中はパレスチナ問題に貢献してこなかった。4者協議の特使になって何ができるのか」とその任命を疑問視する。「ブレア氏はイラク戦争の仕掛け人の1人で、ブッシュ政権の破壊的なネオコン政策を助長した指導者の1人」だとし、「中立」でないブレア氏は和平交渉を進展させることはできないとの見解を示した。

■複雑な反応を示すアラブ諸国

 サエブ・アリカット(Saeb Erakat)PLO交渉局長は、パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス(Mahmud Abbas)議長が、ブレア氏の就任を歓迎し、「ブレア氏とともに、2国家構想に基づいた和平合意に向けて協力する」と述べたことを明らかにした。

 他のアラブ諸国指導者らは、より慎重な対応をみせる。ブレア氏のように高い能力を持ち合わせた人物が特使を務めることで、「パレスチナ国家樹立につながる和平交渉の再開に、弾みがつく可能性がある」と期待を示す一方、親米派に属するアラブ諸国の新聞でも、ブッシュ米大統領の政策に追随したブレア氏は、信頼性に欠けるとの否定的な見解も見られた。

■ハマス側は強い不信感を表明

 特使としてブレア氏は、パレスチナ国家樹立に向けた取り組みの先頭に立ち、パレスチナに対する国際社会の援助を取り付ける任務を負う。しかし、これはパレスチナ自治区の分断で一層困難なものとなっている。ガザ地区を掌握したイスラム原理主義組織ハマス(Hamas)は、イスラエルや欧米諸国からテロ組織だとみなされ、交渉を拒否されている。

 ハマスの報道官は27日、ブレア氏の任命は「ハマスおよびパレスチナ人にとって受け入れがたい」とし、ブレア氏は「イスラエルによる占領を支持するために全力を尽くすだろう」と述べた。(c)AFP/Nagham Mohanna