【6月27日 AFP】米中央情報局(CIA)が1960年に、キューバのフィデル・カストロ(Fidel Castro)国家評議会議長の暗殺を、15万ドル(約1800万円)の報酬でマフィア幹部2人に依頼していた事実が明らかになった。

 これは26日に公開された、CIAの693ページにもおよぶ内部文書に記載されていたもので、同文書の1973年の記述によると、CIAは、カストロ議長の暗殺を目的に、指名手配中だったマフィア幹部2人に接触したという。

 「『暴力団的』な要素を含む機密作戦」のために雇用されたのは、キューバを拠点とするマフィア組織幹部、ジョニー・ロッセリ(Johnny Roselli)と、「アル・カポネ」の後継者と目されていたシカゴマフィアのボス、サム・ゴールド(Sam Gold)。2人とも、米検察当局の「お尋ね者」のトップ10リストに名前を連ねる犯罪者だ。

 CIAは、2人に暗殺の手段として銃を使用することを禁じ、「殺傷能力のある薬物」をカストロの飲食物に混ぜるよう示唆している。

 文書によると、ゴールドがカストロ議長の側近で、マフィアからギャンブルの賄賂を受け取っているキューバの高官、フアン・オルタ(Juan Orta)を暗殺の実行役として推薦した。

 ロッセリから「薬」を受け取ったオルタは、暗殺の機会を狙っていたと告白したものの、明らかにおじけづいており、数週間後に実行役を断った。

 暗殺計画の失敗が、米国が支援した1961年の亡命キューバ人兵によるカストロ政権転覆計画「ピッグズ湾事件」につながるが、これも失敗に終わった。

 このほかにも、同文書には、ベトナム戦争が行われていた1970年代、反戦活動を行った一般市民やジャーナリストに対し、CIAが明らかに法を逸脱した諜報活動を行っていたことや、薬物の人体実験を行っていた事実も書かれている。中国や旧ソ連とやりとりした私信の開封、元CIA職員宅への不法侵入、ジャーナリストの電話の盗聴なども行っていた。開封された私信には、女優のジェーン・フォンダさんあてのものも含まれている。

 重要機密を満載したこの文書は、その重要性からCIA内部で「家宝(family jewels)」と呼ばれていた。同内部文書は、インターネット上でも公開されている(www.gwu.edu/~nsarchiv/)。(c)AFP