【6月24日 AFP】7月1日に中国返還10周年を迎える香港では、サッカーや花火、パンダなど、あらゆるものを利用した記念行事の開催が全力で準備が進められている。一連の祝賀行事に訪れる観客数は数千人に上ると見られる。

 一方、民主化運動の活動家らも、独自のやり方で記念日を迎える。できるだけ多くの人々に対し、毎年7月1日に開催される「より多くの自由を求める集会」へ結集するよう呼びかける。

■民主化運動の参加者、今年は大幅増加か

 胡錦濤(Hu Jintao)国家主席は3日間の香港滞在中、現職の曽蔭権(Donald Tsang)香港行政長官の2期目の宣誓就任式で采配を振るほか、中国政府が香港に贈った2頭のパンダのお披露目式への出席が予定されている。また胡主席は、香港と中国本土南部の都市深セン(Shenzhen)を結ぶ橋の開通式典にも出席する。

 だが、同主席の香港訪問は、労働組合や危険組織として本土で非合法化されている法輪功(Falun Gong)のメンバー、民主化運動活動家などが計画している抗議活動によって損なわれる可能性がある。

 同活動の主催者らは、警察当局が新たな規制を設けたことに不満を述べているが、7月1日には主に、民主化運動が展開される見込みだ。

 中国返還記念日のデモ行進が初めて行われた2003年には、50万人以上が「国家安全条例」の廃案を求め、路上で抗議活動を行った。翌2004年には、やはり50万人が参加し、さらなる民主化を訴えた。

 2006年には動員数が5万8000人に減少したものの、Civil Human Rights FrontJackie Hung広報官は、今年のデモ参加者数は大幅に増加すると期待している。

 Hung広報官は、「経済は順調だが、民衆の大半はその恩恵を受けていない。中国の指導者らは香港を訪れ、自身の目と耳で現状を知るべきだ。民主主義に対する市民の強い願望は無視されてはならない」と語る。

■各国要人の不在が目立つ記念式典

 一連の記念行事の中心となる式典では、各国要人の不在が目立つ。10年前の返還時は、エリザベス女王(Queen Elizabeth II)の代理でチャールズ皇太子(Prince Charles)が式典に出席したが、今回は英国王室からの出席者はいない。また、閣僚級の出席者もなく、英領下時代の香港で最後の総督を務めたクリス・パッテン(Chris Patten)氏も出席しない。
 
 関係者の話によると、メインの式典に招かれたのは地元の領事館員のみで、Stephen Bradley駐香港英国総領事が招待されているという。各国要人の不在について式典主催者は、「香港政府設立10周年の記念式典は、1997年の返還式典とは性質が異なる」と説明している。

■一連のイベントは「愛国心の強化」が狙い

 数か月にわたる準備の末、香港政府は中国文化と西欧文化の要素を取り入れた460もの記念行事を開催する。

 返還記念日前日には、仏教徒のグループが3時間にわたって鐘を突く。記念日当日は国旗掲揚の儀式から始まり、色とりどりの花火で締めくくられる予定だ。

 控えめな活動を続ける人民解放軍(People’s Liberation ArmyPLA)は、パラシュート部隊による実演など、2週間で4つのイベントを行う予定だ。

 一連の行事は、特に「若い世代の間で愛国心を高める」ことを狙ったものと専門家らは見ている。最近実施された調査の結果から、香港の若者の間では自身が「中国人」だという認識よりも、「香港人」だという認識が強いことが明らかになっている。

 City Universityで政治学を担当するJames Sung氏は、「中国政府は、香港市民の国家に対する関心が低く、心は本土に戻っていないと考えている。そのため、同政府は愛国心を高めるために祝賀行事を利用するのだ」と指摘する。(c)AFP/Stephanie Wong